2017/04/11

縄文人のDNA

カナは、グレイトスクエアを通り、Porthaninpuistoへ着いた。広い公園のシンボルなのか古めかしい坐像がある。ベンチが周囲に円形に並んでいる。ーHENRICO GABRIELI PORTHANー カナは坐像の下の文字を追った。高齢のおばあさんが二人、リラックスした表情で掛けている。

「近い公園と言ったらここになるけど」カナは内心で呟き上空を見上げた。常緑樹の葉が空の一部を遮っている。リュックをベンチにおろし、昼食をすませてきたが火星では食べ物があるのか気にかかる。

「大丈夫だよ。カナが食べるものは私が用意してあるから」

「えっ? パパもう来たの」

「ああ。そこだと近くのバス停に人が大勢いるから、もう少し待つよ」

「でも、この時間だとだれか見ているよ」

「だいじょうぶ。クラフトが見えないようにするから」

「じゃあ、わたし、大丈夫?」

「心配ないよ。上空から場所を指定するから」

「でも、私が空へ上がって行ったら、見られない?」

「上空からだとどこに誰がいるか確認できるから、タイミングを見て案内するよ。このクラフトの音はほとんど聞こえないだろうし、樹木で見えない場所を選ぶから」

「じゃあ、私は、ここに掛けていて良いのね」

「OK」

To Be Continued

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2017/04/05

縄文人のDNA

フィンランドの大学に留学した渋江カナは、2度目の秋休みを迎えた。京都の大学にいたときにはなかった休みだが、1週間ある。夏休みには母のいる京都に帰ったが、講師のミナから届いたメールで忙しそうだったので、母のところに1週間ほどいて、ミナには会わずに戻った。夏休みの後半は、フィンランド語とスウェーデン語の学習をしながら、教会でボランティアをした。

秋休みに入った日の昼前に父から連絡が入った。父の連絡はいつも脳内に直接働きかける方法だった。

「カナ、しばらく休みがあるのなら、迎えに行くからこちらへ来てみないか?」

「こちらってアメリカ?」

「いや、火星」

「パパ、アメリカかと思ったら、今、火星にいるの?」

「そう。大学に籍を置いてるけど、ちょっと研究していることがあって、火星に来ているんだ。この間、良治も金星から来たんだよ。もう帰ったけど」

「そうだったの。それで、わたし、どうやって火星に行くの?」

「迎えに行くよ」

「スペースクラフトで」

「そう。これから行ってもいいかい?」

「いいけど。わたしのアパートメントの上空へくるの?」

「いや、近くの公園。人目を避けて、雲の陰から合図するよ」

「分かった」

To Be Continued

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2017/03/27

テレパシー

ベンチを後にした春利は、マシンが消えた空の方を見つめながら、常夜灯で照らされた人工池の横から草地広場を横切って行った。

谷川良治の意思が伝わって来たマシンは、三角形のエイのような格好だった。雲のある夜空に春利が姿を確認できたのは、黒い機体の周りがブルーの光線で縁どられていたからだった。

「それにしても、良治はどのようなテクノロジーを学んだのだろう」春利が内心で呟いた時、ジャンパーのポケットで着信音がした。

「沢さん。どうでした?」

「えっ? ミナさんの声だけど、ミナさんですか・・」

「はい、ミナです」

「どうでしたって、ミナさん、やっぱり・・」

「ええ。今回に関しては、タニカワリョウジさんが、上空に現れることが分かっていたわ」

「じゃあ、僕は今、公園の外に出る道を歩いているけれど、きのう、ミナさんの声でメッセージを送って来た相手が誰か、知っていたんですね」

「はい。私がコメントしない方が良いと思ったから。直接の方が」

「そうだったんですね。それにしても、谷川良治が、あんなマシンで現れるなんて。彼は、ほんとうは、僕のような人間じゃなくて、人の姿をしたヒューマノイドかハイブリッドかもしれないなんて思ったりしてるんです」

「ほんとうのところ私にも分からないわ。伯父の渋江さんだって、人間の科学では推測できないものを持っているかもしれない」

「フィンランド留学中の、娘さんのカナさんだって・・」

「かもしれないわ。それで、沢さんの上空に現れたのね」

「ええ。雲の向こうから現れて、マシンも見せてくれたけど、夢をみているような感じですね。良治がETだというのなら分かるような気がするけど、僕の中では、金星で彼に遭ったことも夢のようだから」

「ええ」

To Be Continued

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2017/03/20

テレパシー ( Telepathy)

「そう、地球の小学校で、そして金星で君と会った、同級生のタニカワリョウジだよ」

「どうして、そんなことが?今度は谷川良治の声で話している」
春利は呟きながら上空を見上げた。部分的に覆われている雲の間に周囲が青く光る何かがあった。

「沢君、僕はふだん金星の地下にいることが多いけど、火星で伯父に会うことになり、その帰りに、君に声をかけてみようと思ったんだ」

「それで、ここからは雲で見えないけど、乗り物の中から僕に話しかけているんだね」

「そう。君のいる所はいま夜に向かってるから暗いけど、その公園にはまだほかの人もいるから、そこへ降りていくことは出来ない。だから、雲の上から、君と話しているんだ」

「でも、君には僕の思うことも伝わるし、その上空から話すことも出来る。僕には信じられない。君はもしかして・・」

「いや、僕は地球人だよ。ただ、地球よりずっと進んだテクノロジーを学んだし、不思議なことが出来る乗り物に乗っているから」

「だから、君がそんなマシンに乗り、ETのようなテクノロジーを使えることが、僕には信じられないんだ。きのう、僕にメッセージを送ってきた声も早乙女ミナさんの声だったし」

「そんなのは、周波数を合わせれば簡単にできることだから」

「そうなのか。それで、いま君が乗っているマシンは、君が操縦しているの?」

「いや、僕のほかにもいる」

「ETが?」

「今は詳しくは言えないけれど、心も持っている・・」

「地球人が言うロボット?」

「そうも言えるけど、人間が思うのとは違うよ。地球人のように細胞も心もあるんだから」

「君のすぐ隣にいるんだね?」

「そう。笑っているよ」

「あ、そう。よろしく伝えてね。最後に、そこから消える前に、ちょっとだけマシンを見せてくれるかい?」

「OK!」

To Be Continued

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2017/03/12

テレパシー

sin.jpg


中学生の数学の授業を終えた春利は、10分ほどして表へ出た。辺りがとても暗く思えた。

見上げると空の半分近くが雲で覆われていたが、雲の切れ目に星が見えた。
新横浜公園までは早足で歩いても40分近くかかった。

「あした行くよ」とミナの声が頭の中で響いたことをいくども思い返す。

不安だったが、ミナの声で伝えてきたのだから、悪いETではないだろう、と自らに言い聞かせた。

それにしても、他人の声でメッセージを伝えて来るってどういうことなんだろう。

陸橋を渡り、公園に近い幹線道路の歩道まで行った時、たまに来るニトリのシャッターが下りているのに気付いた。

会社帰りと思われる男女とすれ違い、彼らはどんなことを考えながら帰路についているんだろう。
僕とは全く違う世界にいるんだろうな、と思わず振り返る。

怖いけど、自然にそちらへ引き寄せられていく。

スタジアムにつづく石段を上がり、前方にそびえる円形の建造物に眼を向ける。
通路もスタジアムもライトでしっかり確認できる。怖いのに足だけは速まっている。

スタジアムの周囲を巡る通路から広いコンクリートの坂を下り、中央広場に出た。
相手は、こんな時間に僕が来ることを知っているだろうか。草地広場を横切り、昨日ミナと並んでかけたベンチへ向かう。
足音がして振り返ると、トレーナー姿の若者が走ってくる。等間隔で並ぶ常夜灯で数十メートル先まで見える。

「来たよ・・」昨日のベンチに掛けて恐るおそる顔を上げた。雲は減り、スタジアム方向の上空には星もちらほら見える。

「僕だよ。分かるかい?」

「えっ?」

「谷川良治」

「たにかわりょうじ・・」

To Be Continued

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