2017/03/20

テレパシー ( Telepathy)

「そう、地球の小学校で、そして金星で君と会った、同級生のタニカワリョウジだよ」

「どうして、そんなことが?今度は谷川良治の声で話している」
春利は呟きながら上空を見上げた。部分的に覆われている雲の間に周囲が青く光る何かがあった。

「沢君、僕はふだん金星の地下にいることが多いけど、火星で伯父に会うことになり、その帰りに、君に声をかけてみようと思ったんだ」

「それで、ここからは雲で見えないけど、乗り物の中から僕に話しかけているんだね」

「そう。君のいる所はいま夜に向かってるから暗いけど、その公園にはまだほかの人もいるから、そこへ降りていくことは出来ない。だから、雲の上から、君と話しているんだ」

「でも、君には僕の思うことも伝わるし、その上空から話すことも出来る。僕には信じられない。君はもしかして・・」

「いや、僕は地球人だよ。ただ、地球よりずっと進んだテクノロジーを学んだし、不思議なことが出来る乗り物に乗っているから」

「だから、君がそんなマシンに乗り、ETのようなテクノロジーを使えることが、僕には信じられないんだ。きのう、僕にメッセージを送ってきた声も早乙女ミナさんの声だったし」

「そんなのは、周波数を合わせれば簡単にできることだから」

「そうなのか。それで、いま君が乗っているマシンは、君が操縦しているの?」

「いや、僕のほかにもいる」

「ETが?」

「今は詳しくは言えないけれど、心も持っている・・」

「地球人が言うロボット?」

「そうも言えるけど、人間が思うのとは違うよ。地球人のように細胞も心もあるんだから」

「君のすぐ隣にいるんだね?」

「そう。笑っているよ」

「あ、そう。よろしく伝えてね。最後に、そこから消える前に、ちょっとだけマシンを見せてくれるかい?」

「OK!」

To Be Continued

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2017/03/12

テレパシー

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中学生の数学の授業を終えた春利は、10分ほどして表へ出た。辺りがとても暗く思えた。

見上げると空の半分近くが雲で覆われていたが、雲の切れ目に星が見えた。
新横浜公園までは早足で歩いても40分近くかかった。

「あした行くよ」とミナの声が頭の中で響いたことをいくども思い返す。

不安だったが、ミナの声で伝えてきたのだから、悪いETではないだろう、と自らに言い聞かせた。

それにしても、他人の声でメッセージを伝えて来るってどういうことなんだろう。

陸橋を渡り、公園に近い幹線道路の歩道まで行った時、たまに来るニトリのシャッターが下りているのに気付いた。

会社帰りと思われる男女とすれ違い、彼らはどんなことを考えながら帰路についているんだろう。
僕とは全く違う世界にいるんだろうな、と思わず振り返る。

怖いけど、自然にそちらへ引き寄せられていく。

スタジアムにつづく石段を上がり、前方にそびえる円形の建造物に眼を向ける。
通路もスタジアムもライトでしっかり確認できる。怖いのに足だけは速まっている。

スタジアムの周囲を巡る通路から広いコンクリートの坂を下り、中央広場に出た。
相手は、こんな時間に僕が来ることを知っているだろうか。草地広場を横切り、昨日ミナと並んでかけたベンチへ向かう。
足音がして振り返ると、トレーナー姿の若者が走ってくる。等間隔で並ぶ常夜灯で数十メートル先まで見える。

「来たよ・・」昨日のベンチに掛けて恐るおそる顔を上げた。雲は減り、スタジアム方向の上空には星もちらほら見える。

「僕だよ。分かるかい?」

「えっ?」

「谷川良治」

「たにかわりょうじ・・」

To Be Continued

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2017/03/02

テレパシー

「沢さん。じゃあ、私は今日はこのくらいで。明日の準備もあるでしょうから」

「ミナさんは、大学の講師を辞めて、完全なフリーになったんですね」

「フリーと言っても、英書の翻訳はやっているけど」

「それ、小説ですか?」

「ええ。実は、以前から翻訳はやっていたのよ」

「それは初耳だなあ。それに何より、ミナさんが別名で小説を書いていたなんて、前回のメールで初めて知りました。どんなの書いたんですか?」

「興味がある?」

「それはありですよ」

「じゃあ、送っておくわ」

「いえ、本のタイトルと出版社名を教えてもらえば購入しますよ。その方が良いでしょう。あそうだ、ペンネームも」

「今だったら、書店にあると思うから。ラインの方に送っておくわ」

二人は鶴見川よりにある人工池の入口にかかっている小さな橋を渡り、草地広場と呼ばれる広い芝生を歩いて行った。

「この公園はほんとうに広いわね」ミナは左手にそびえる円形のスタジアムを見上げながら言った。

「そうですね。鶴見川の遊水地を利用した多目的公園で、横浜市では一番広いようです」

「私はこれから武蔵野に帰るけど、数日はこちらにいるから、ラインで連絡もらえば、早く返事が出来ると思うわ」

その日春利は地下鉄駅までミナを送り、改札の10メートルほど手前で握手した。別れてから、ミナの白くて柔らかい手の感触がよみがえってきた。

ミナさんは、テレパシーを送って来たのが誰なのか知っているんではないだろうか。明日、授業が終わった後にもう一度公園へ行って見ようか。「あした行くよ!」とミナの声で届いたメッセージを小声で呟いた。

To Be Continued

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2017/02/28

テレパシー

jinja.jpg


ミナが上空へ顔を向けた時、春利はふいに時間が気になって腕時計に目をやったが、後ろでバタバタと走る足音がした。
振り返ると、柴犬のリードを持った高校生ぐらいの女性が引っ張られる格好で駆けて行く。

「あした行くよ!」

「えっ?」春利は思わずミナの方に顔を向けた。

「ミナさん、いま何か言った?」

「いえ。何も」ミナは上空から視線を春利の方へ向けた。

「でも、あの声は確かにミナさんの声だと思ったけど」

「私の声で、何と言ったの?」

「あした行くよ」

「確かに私の声だったのね」

「ええ。その声だった」

「もしかして」

「もしかして? 何か心当たりが」

「それ、どこから聞こえた?」

「うーん。そう言われると分からなくなるけど」

「テレパシーじゃないかしら」

「テレパシー? だれから・・」

「くわしいことは分からないけど。その声が私には聞こえなかったということは、沢さんの頭の中に伝えてきたんだと思うわ」

「早乙女さんの声で、僕の脳内に伝えて来たということは、僕とミナさんのことを知っている存在」

「そうね。『あした行くよ』って言ってきたんなら、また伝えてくると思うわ」

二人は同時に上空へ目をやった。

To Be Continued

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2017/02/26

ミナの行方

「現在こうして暮らしている僕らは、学校でも家でも、そうしたことを聞いたことがなかった」

「そうね。だから、ETと人間の橋渡しをしてと言われても、人間の側があまりにも知らないし、一つの種に限っても」

「プアビさんたちのような一つの種に限っても、一般人にどう説明したらいいかも分からないですよね」

「ええ。プアビさんは、自分たちの種を中心に考えていると思うけど」

「あの、マリア様の種も近いところにはあると思うけど、実際はどうなのか、僕にはさっぱり分からない」

「この日本列島に最初に降り立ったのは誰かもまだはっきりしないわね」

「ミナさんに分からないのでは、僕にはそれ以上分からない」

「でも、意外とそうでもなかったりして」

「それはどういうこと?」

「私には、確かにリモートビューイングがあるかもしれないけど、ある領域から向こうはまったく見えなかったりするから」

「ある領域って?」

「別な空間とか、時間の感受というか・・」

「それらのある部分で、とつぜん見えなくなるというか、判断が出来なくなる、ということですか?」

「ええ。その面、沢さんの方が見えているかもしれないって思うことがあるわ」

「でも、僕には見えないことだらけですよ。ただ、日本列島には、土偶とか土器とか、当時の人が想像でつくったにしてはおかしい。見たものをそれに近い形で再現したと考える方が納得できるものが発掘されている。たとえば、エジプト・ギザ高原で見つかったアヌ王のマスクとか言われるものより精緻ともいえるものや縄文の女神とか仮面の女神と言われる土偶が八ヶ岳山麓周辺で発掘されていることを考えると、少なくとも縄文時代には居たと考えるのが自然だと思われる」

To Be Continued

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