2012/01/18

愛って

佐野を同行して約束の会社での営業から戻った時、来未はすでに退社していた。

佐野はすぐタイムカードを押して帰り、春利は課長に報告してから名古屋駅に向かった。資料を渡して具体的な話をすると、先方の課長は前向きに検討すると言ってくれた。40代半ばの実直な人柄で悪い感じはしなかった。

春利は夕食は家で作ろうと思った。その時間の地下鉄はいつも通り満員だったが、春利は明るい気持ちになっていた。動き出した車中で立ったまま携帯を開いた。来未からメールが入っていた。

来未の家に泊まり体を寄せ合って朝を迎えたことがよみがえった。

私は先に退社して先ほど家に着いたところだけど、訪問先の会社ではどうだった?
と、言ってきた。

下車して改札を出て人の流れを外した辺りで通話ボタンを押した。
3度コールした時、来未が出た。

「メールありがとう、感触は悪くなかったよ、注文が入ると良いけどね。・・今電車を降りて家に向かっているところ・・」

春利の声は弾んでいた。来未はこれから夕ご飯の準備に入るところだという。一緒に食べることが出来たらいいのにと春利は思う。

じゃあ、また明日ね、と来未が言う。

切ってから、アパートが見える辺りまで歩いて行った時、親父はどうしているのだろう、再婚したのだろうか、まさか死んだということはないだろう。しかし、お母さんの葬式にも顔も出さなかったし、どこにいるかも分からないし、誰も知らせなければ分からなかっただろうし、と、急に今まで意識の奥に押し込んでいたものがふつふつとわきあがってきた。


To Be Continued

 
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