2012/01/29

クリスマス

クリスマスって今の日本人にとってどういう意味を持っているのだろう。
クリスマス・イヴ、そして桑田荘太は当日を迎えた。

妻のさなえと別れて20余年。職は転々としたが、クリスマスはいつも一人で過ごしてきた。クリスマスだからといってディナーパーティーを催したのは、最後に派遣で勤めた通信会社のコールセンターだけで、それも午後6時半以降の時間だけだった。

桑田の仕事は、客の問い合わせを受けることが中心のセンターで、アウトといってこちらから発信して獲得する電話営業だったから、出席しようと思えばいつでも席を外すことが出来た。

その分とうぜん成果は発生しなくなるが、それより年長の桑田は、若い男性正社員や多くの派遣女性が集うそのフロアへ顔を出す気にならなかった。結局、時間まで仕事をつづけ、その間獲得もできなかったが、フロアには顔を出さないでタイムカードを押して帰った。

それ以外では、デパートの家具売り場でアルバイトをしたとき、仕事が終わってからクリスマスだからと仲間に誘われ、自腹で飲みに行ったことがあった。しかしそれは、クリスマスとは何ら関係のない飲み会だった。

桑田は一人ラジオを聴きながら、妻・さなえと幼い春利の3人で過ごした夜のことを思い出した。荘太が10日ほど前に買ってきた、サンタや長靴やきらきら光るボールを飾り付けた幼児用のもみの木。コンセントを差し込むとツリーの周りの小さなライトが点滅した。丸いケーキにいったんローソクを灯し、荘太が小声で「きよしこの夜」を歌った。

さなえが包丁でケーキを切っている間、神学部を出ている荘太はクリスマスのほんとうの意味を話そうかどうしようか考えた。しかし幼い春利に話してもその場が暗くなるだけかもしれないし、さなえに苦労のかけ通しの身で偉そうなことは言えないと思い話さなかった。

さなえは、春利と荘太に切り分けたケーキを皿にのせて配り、最後に自分のものを切り取った。


To Be Continued

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