奇妙な会話音

春利が父の家に行ったのは、年明け2日の昼だった。
「春利も2月で33か」
「父さんは?」
「今月10日で68になる」
「ところで父さん、去年の12月初めに横須賀の諏訪大神社という所へいったんだけど、そのそばの公園で初体験したことがあった」
「ヨコスカのスワオオカミシャへ。そこで今まで見たこともないことに出くわしたの?」
「そうなんだ。どんなことだと思う?」
「春利が初体験と言えば、これまで出あったこともない生き物とか?」
「父さん、よく分かったね。どんな生き物だったと思う?」
「うーん。会ったこともないETとか・・」
「父さん、図星。樹木の間で、緑も多かったから良くは見えなかったけど」
「大きかったの?」
「1メートルくらいかな。とにかく一般の人間の大人より小さかったことは確かだよ。宇宙服かもしれないけど、体は緑色みたいで、目が大きく斜め上につりあがった感じ」
「春利は側まで行ったの?」
「それが、唸るような声というか、狸とか狐とかのものとも違うし、確かめようと、恐るおそるそちらへ近づいて、それでも、10メートルは離れていたと思うけど、2本足で立って向き合って何かを話しているようだった」
「春利の知らない宇宙語で話していた」
「そう。母音を伸ばすような。風にのって来たからそう聞こえたのかもしれないけど、とにかく意味不明だった」
「うーん。ネットでさまざまなエイリアンの姿みたいなのを見たことがあるけど、それぞれの種が、どんな会話というか意思疎通をしているのかは分からないね。やはり、宇宙語としか」
「それが、僕のことに気づいたからか、次の瞬間には2人の姿は消え、樹木の上の空に漆黒のスペースクラフト浮かんでいた」
「やっぱり、人間技ではないね」
「ひし形のクラフトの周りには、コバルトブルーの縁取りが光っていた」
To Be Continued
Sponsored Links