2016/08/13

古(いにしえ)と結ぶ

歩きながらタダキに土産を渡した春利は、以前畑だったという所に建っている家の屋根に目がいった。空は曇っていたが、屋根のところどころに雪が残っている。

「横浜だと雪は残っていないけど、さすが富士見は」

「親父がいうには、むかしは信州はもっと雪が降って積もっていたというけど、地球温暖化の影響があるのかなあ、分からんけど」

「いらっしゃい。はじめまして」石垣がつづき、脇道を少し行った所に入口が見え、先ほどタダキが出てきたガラス戸の前に妻と幼い女の子が手をつないで迎えてくれた。

「大石は、家の向こうに」春利はタダキの後から家の右手に回りこんでいった。

「これは、ほんとうに大きいですね」
春利の脳裏に、「あなたのおとうさんの生家の畑に巨石があって、その大石の裏にあなたに伝えようとしている印がある」とカナが言った言葉がよみがえってきた。

「俺なんかは、子供の頃からこの畑にいやに大きな石があるなくらいで過ごして来たけど、ここに家を建てるときに動かすのに大変だったけど、大石があることは、荘太さんから聞いて知ったの?」

「それが、違うんです。夢の知らせ、と言ったら良いのかな。父には後から話して」

「夢で知らされた?」

「ええ」

「それは、不思議というかロマンチックというか」後ろでタダキの妻の声がした。

「この辺りの家には、こんな巨石があるのはウチくらいかな」

「どうしてここにあるのか調べたことはありますか?」

「畑を掘ったら出てきたのか、どこかから運んできたのか。高校生の頃、ちょっとこの辺りの土器について調べたことがあったが、この巨石のことは分からないままだね。ところで、この大石に何かがあると・・」

「あるかどうか。夢で聞いたことがほんとうなら」春利はところどころに暗緑色の苔が生えている大石のまわりをスマホを手に巡った。子供の頃は側に柿の木があって上にのぼったこともあったが、何かの印とかはなかった、というタダキの声がする。

「これ、裏側を見せてもらうことは無理ですよね?」春利はためらいつつ言った。

「スコップはあるけど、ブルトーザーなんかないし。どうやって?」

「スコップがあれば。巨石の脇に穴を掘ってのぞくか、それで駄目なら転がすことが出来れば」

「分かった。大変だがやってみるか。この際、親父の家からもう一本スコップとそれにツルハシを借りてきてみなでやってみよう」

「ありがとう。何もなかったら御免」

To Be Continued

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