2016/03/10

八ヶ岳山麓

二人が地階から階段を上がると、不思議なことに立ちはだかっていた壁の一部がスライドして人が入れる状態になった。先に通って来た広い部屋が目の前に広がっていたが、同じところを戻るにしては、天井へと向かう設備が何もない。

「父さん。あの庭の金星の石から表へ出るのだろうか」

「いや、帰りはこの部屋から直接表へ出られる所が壁の中にあると・・」春利は父が壁の方へ向かっていくのを見守った。それは、その建物の入り口と反対側の方角だった。

「あっ!」父の後からついていった春利は、眼前の壁に美術の本か何かで見たことがあるような浮遊する人が描かれていて、周囲には手の平形が薄い赤茶色で不規則にいくつも描かれているのが分かった。

「父さん、来た時には、この壁に絵があるって気づいた?」

「いや。気づかなかったな」

「ここに、いっぱい手の平あるということは」

「うん。この中のどれかが・・」

「じゃあ、父さん」春利は良治は伯父からこのことも教わったのか、それとも直感で探り当てたのかと思いながら、そのうちの一つに手の平を当てた。

「だめか、じゃあ今度は私がやってみる」荘太が左手を手形の一つに合わせたが何の反応もなかった。

「父さん。あの方から、もっと詳しいことを何か聞かなかった?」

「そう言えば・・」荘太は両手を差し出し、30センチほど間隔が離れている眼前の左右の手形に合わせた。

「やった!」

春利の声と同時に眼の前の壁の一部がスライドし始めた。

「父さん、外が見える」

「これは、透明なカベ?」

「二重になっているんだ。これ、こちらからは見えるが向こうからは見えないのかもしれない」

「うん。セキュリティーかも。それで、今度は手形はないな」

「父さん。どこでもいいから適当な所に手の平でタッチしてみて」

荘太がタッチすると、透明な壁の一部がスッと開いた。

「春利の言う通りだ」表に出た二人はすぐに閉じられた壁が周囲と同じグレイであることを確認した。

To Be Continued

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