2016/02/11

八ヶ岳山麓

その時だった。前方の県道から少し入った辺りに松の古木が見えた。草むらには人の背丈ほどの垣根のような低木がところどころに生えている。夢の中の景色と眼前の風景が春利の頭の中で一致した。

一面の草むらのように見えたが、側まで行って見ると幅1メートルくらいの道がつづいていた。ここをしばらく行った所にあの家はあった。夢の中でカナの笑顔が案内してくれた映像が浮かんできた。

足は半ば無意識に進んでいて、いつの間にか常緑樹の低木が道の両側に並んでいた。道は大きくカーブして小さな林の中へ続いて見えたが、周囲に人家はなかった。それまでも人家はまばらだったので、そうした所なんだろうと春利は思った。

と、木立の向こうに見覚えのある建物が現れた。

「間違いない。あの家だ」春利は歩を進めながら内心で呟いた。その辺りには見かけない西欧風というかコンクリートの外観で、屋根の部分は半球形のような形状だった。

春利は鉄格子の門扉前に立った。インターホンも郵便受もなかった。門扉に鍵もかかっていなかった。誰か住んでいるのだろうか? 静かに扉を開けて中へ入った。ちょっと見では目立たなかったが、そこには周辺の庭土と同化して見える栗色で平べったい大小の庭石がつづいていた。建物の周りに点々と並ぶ平べったくて丸い大小の庭石の上を歩いて行った時、カナの言葉がよみがえってきた。

「その建物には一般の家にあるような建物の中へ入るドアは付いていないのよ」

電気、ガス、水道も設備されていない・・。

「金星の庭石をさがして・・」夢の中にしては不思議なほど鮮明だった言葉が思い出される。家の周りに10個の丸い庭石が並んでいる。一番大きいのが木星で、金星をさがすんだった。

春利は建物の周囲を回ってみることにした。黒い金属製の柵の内側にはヒイラギモクセイの生垣が家を取り囲むように続く。コンクリートの建物には地面から2メートルほどの位置にステンドグラスの窓が複数ある。グレイの建物と生垣との間は2メートル余りある。一定の間隔を置いて並んでいる大小の石は、どれも栗色で周辺の庭土と同化しているが、意外と大きいことに驚いた。

春利はぐるりと一回りして、それらの大きさと順番からそれが金星ではないかと思う石の側に立った。

To Be Continued

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