2015/01/23

世界の向こう(桜)

春利は4月半ばに川崎の父のところへ行った。メールを送り、すぐ返事が来たので、顔を見に行こうと家を出た。

「父さん、桜の花もそろそろ終わるね。上海にいた時は、公寓に近い所に中山公園というのがあって、けっこう広い公園で、桜の花もあったよ。開花時期は日本とそんなに変わらないと思うけど」

「そうなんだ。一度行ってみたいね。しかし、父さんの生まれた信州では、遅いところでは5月初旬まで咲いている所がけっこうあると思うよ。しだれ桜とか、桜にも種類があるし。時間があれば、一緒に見に行こうか」

「そうだね、今年は塾を始めたばかりで、時間的に遠くへは行かれないけれど、来年ならどうかな」

「あの頃は思うようにいかなくて、春利を私が生れた家には一度も連れて行かれなかったから」

「父さんが生れたとこは」

「私が学校に上がる頃は諏訪郡と言って広いエリアを指していたと思うが、その後それぞれ独立した市が出来たんだね。・・そうだ、思い出したことがある」

「なに?」

「桜の花と言ったら、笑われるかもしれないが・・」

「桜の花の何?」

「駅で降りてここへ来る方でなくて、駅の向こう側すぐの所に、麻生川に沿って古沢辺りまで桜並木が続いているが、散歩がてら花見をして歩いていた時、ちょっと不思議なことがあった」

「いつごろ?」

「震災のあった年の・・」

「どんな?」

「それが、春利の話を聞き、もしかしたらと思って気になっていた」

「それ、来未のこと?」
顔を上げた二人の目が出合ったまましばらく見詰め合っていた。

To Be Continued

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