2014/07/19

リアルの出会い

改札の手前で、春利はこちらを見て立っている男が父・桑田荘太だとすぐ分かった。頭髪はすっかり白髪で、頬はくぼみがちだったが、春利の方を見た視線は、紛れもなくスカイプで話した父だった。

桑田は春利の方に視線を向けていたが、確かに息子の春利だと確信するまでに数秒かかった。春利は父と分かるとすぐに手をあげた。父はそれで遠い記憶を呼び戻すような目をして息子の全体像を目でたどった。むろんスカイプで春利の顔を見ていたが、幼い頃と25年後の息子が頭の中ですぐに実感できなかった。

「立派になったな」
改札を通って目の前に来た息子に言った。春利は言葉が見つからなかった。

「ここから歩いて15分ぐらいかかるから。荷物重いかな?」

「大丈夫。バッグは膨れてるけど衣類だから」春利は父と並んで歩き始めていた。

「きのう、日本へ帰ると言ってたけど」

「ちょっと福島の方へ行ってきたので」

「福島。誰か地震の被害にあった人がいるの?」

「父さんには話してなかったけど、付き合っていた彼女がいたんだけど、名古屋の会社に同期で入社したんだ。運悪く、あの地震が起こったときに両親が暮らす、いわきの久ノ浜へ帰省して、僕が上海へ転勤になってからなので、彼女がその日帰省していたことも後から会社の人から聞いて知ったんだけど」

「それで?」

「彼女も、両親も行方不明のままで。地震の後の津波で家ごと持っていかれたんじゃないかと。海に近いので、その辺り、建物の土台というか基礎部分だけ残して、平地になっていて辺りに草が生えていた」

荘太の足が一瞬止まりかけ、信号のない交差点を左へ折れた。
「そんなことがあったんだ」

To Be Continued

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