2014/05/25

ミナの来訪

春利がミナの宿泊ホテルに近い福島ラーメン店で別れ、ホテルの前まで同行してから公寓に戻ったのは夜の9時過ぎだった。

シャワーを浴び、ドライアーで髪を乾かした。湿度が高いとはいえ真夏だからすぐ終わった。テレビで日本のニュースを確認した。震災関連では仮設住宅と福島原発事故の放射能についてふれていたが、新たな遺体が見つかったという報せはなかった。

ベッドに横になると、その日のことが浮かんできた。
57階のミナの泊まる部屋からは上海中山公園、その向こうに上海の街が霞んで見えた。外は蒸し暑いから、ホテル内のレストランで夕食をとも思ったが、来未のことで春利に会いに来たことを思い、来未の郷里にふれ、福島ラーメン店が近くにあるけれど良かったら、と訊いてみた。

可能な範囲で来未さんのことを聞かせてください、とミナはもちろんです、といった表情でオーケーした。福島ラーメン店は客が多く日本語が飛び交っていたが、運よくカウンターでない席が空いていた。小さ目な方形のテーブルに椅子は二つだけで少し狭いかなとも思ったが、すぐ席を確保しないと後から来た客が座ってしまうところだった。

ミナと向き合いラーメンを食べながら話した。春利はみそ味でミナはしょうゆ味だった。来未の家族を呑み込んだ東日本大震災。春利もミナも、当日はさほど影響を受けないところに居た。

まさか、あのとき来未が郷里に帰っていたとは知らなかった、来未の姉・梨花から来未の両親も行方不明になったままだと聞いたことを春利は話した。津波に呑まれてゆく来未を想像すると胸が苦しくなった。ミナは春利の目をじっと見て聞いていた。

除湿にしているエアコンの音が暗闇で唸っている。

翌朝7時前に目覚めた春利は、パンと野菜とコーヒーで朝食をすませ、8時過ぎに公寓のエレベータに乗った。途中で一度止まり、フロアから中国人の若い男女が乗った。ミナとの待ち合わせ場所は上海中山公園入口だった。ミナの泊まった高層ホテルの下だから迷うことはないだろう。

To Be Continued

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