2014/04/14

メッセージ

土曜の朝、春利は半年ぶりで上海中山公園へ向かった。名古屋支店にいたころは、5月の初めは連休だったが、上海へ来て年ごと変わり、その年は4月29日から5月1日が労働節で休みだった。

日本だと5月5日は「こどもの日」で休みだが、土曜日だから上海でも休みだった。前日までは深圳に二泊の出張で、夕方飛行機で上海へ戻った。日本のテレビニュースを観ると、漁船衝突事件があってから尖閣周辺海域問題で反日感情が高まっているような報道だが、春利の会社の現地での営業ではさほど影響がなかった。

疲れもあったが、会社が休みだと朝早く目覚めた。パソコンをチェックしながら、パンと牛乳、それに野菜で朝食を済ませた。父からのメールは入っていなかった。父が先に写真画像を送ってくれたので、春利は、上海の会社ビルや現在借りている公寓の写真を数枚くわえて添付メールで送った。父の髪の毛はすっかり白髪だったが、春利はどこかしら父に似ている自分を感じた。

何かに引かれるように家を出て歩いていた春利は、上海中山公園の入口に着いた。中からラジオ体操のような音楽が聞こえる。

特に決めてきたわけではないが、「櫻花亭」の看板があるところを歩いていた。朝早くから来る高齢者は多いが、桜の花がほとんど散ってしまった林の中には誰もいなかった。

春利は、花びらが積もっている林の草むらに入っていった。暑くも寒くもなかった。中ほどまで行くと、春利はそっと腰を下ろした。張虹(チャン ホン)も同行して出張した深圳の訪問先の会社が浮かんできた。

「沢さん。私は、サオトメ ミナ、と言います。来未さんから、あなたのことを聞きました。あなたに会えないまま、地震の後の津波で向こうの世界へ行ってしまったため、私にその思いを伝えてきたのです。一度あなたに会ってお話ししたいと思っています・・」

「えっ?・・」春利は半身を起こし、林の中を歩いている若い男女の方を見た。大声で何か冗談を言って笑っているようだ。

違ったか。今のは夢? サオトメ ミナ。来未さんからあなたのことを聞いた、と。

To Be Continued

Sponsored Links