2014/02/21

別の空間

ミナがあの不思議な体験をした公園へ行ったのは、3月になった日の朝だった。

誰かいれば帰ってこようと思っていたが、犬の散歩に来ていた中年女性はミナと入れ替わりに出て行った。まだ子供たちの春休みには間があったし、その時間、滑り台や砂場や遊具にも幼児連れの親子はいなかった。常緑樹の下のベンチにも人の姿はなかった。

ベンチに座ったミナは、桜の古木を見上げた。蕾はもう少しで開きそうだった。

夏のあの日、ミナの眼前に何か鳥居のような光の窓が現れた。あの時はほんとうに不思議だった。しかし、何も予感がなかったわけではなかった。体外離脱の練習を始めたこと自体、自ら望んでいたことだった。5歳のときに初めて見た光る物体のことをふと思い出すことがあった。それから見たあのUFOとエイリアン。ふだん見えている世界のほかに、別の空間がある。その世界をミナはもっと知りたいと思った。

ミナは静かに呼吸し、爪先から身体の上へと意識して力を抜いて行った。頭まで行った時、あの夏のときと同じように前方に鳥居のような光の窓が現れた。ミナは光の窓に歩み寄った。

ミナは身体が上空へと昇って行くのを感じた。

「ここは?」ミナには「杜」という言葉が浮かんできた。山というのではなかった。大きな神社。しかし出雲大社ではなかった。

「どこの神社だろう・・」

「ここは、諏訪湖周辺にある諏訪大社です」

「えっ!」いつ現れたのか、ミナのそばに二人の女性がいた。

諏訪大社? ミナは古い神社であることは知っていたが、どうしてここへ来たのか、そしてどうして二人の女性が突然現れたのか、と。

「あの、わたしは来未」

「わたしは春海」

「私は、ミナと言います」

「私たちは、地震による大津波で」

春海の言葉がミナに伝わった。互いに口は動いていなかったが、言おうとすることは伝わった。

「地震て、あの東日本大震災?」

To Be Continued

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