2013/11/21

上海中山公園

土曜日の朝、まだ薄暗い時間に春利は公寓(アパート)の15階の部屋を出た。会社は休みだが、部屋で一人で寝ていられない気持ちに襲われた。

いつも通勤に利用している中山公園駅の近くに東京ドーム4個分が楽に収まってしまうほど大きな公園があった。孫文を記念して作られた公園ということだったが、以前はイギリス人の私宅庭園だったと聞けば、そのような庭園の風格も感じられたが、中国や日本の庭園をもミックスしたような趣があった。

入口に建てられている大石に「中山公园」と赤字で縦書きされた文字をちらりと見たが、春利は何か思いつめるような表情で歩いていた。

遠くのプラタナスの樹の側で早朝から太極拳をしている高齢者がいた。大きな池の向こうには、道教の寺院を思わせる屋根の建物が見えたが、まだボートも浮かんでいなかった。
もう一時間もすれば、すっかり明るくなり、広い公園のあちこちでストレッチをする人、社交ダンスをする人、凧揚げをする人など、思いおもいの趣味を楽しむ人がやってくるだろう。

100年は優に経っていると思われる樹木の緑も豊かで、どこまでも続く芝生。花壇の花たちが季節の彩りを添えている。春利はいくどか園内を散歩したことはあったが、そのように広い公園は日本では見たことがなかった。

春利は、池に掛けられた「情人橋」と書かれた石橋を渡り、奥の広場へ歩いて行った。遠くでウォーキングする人の足音がする。

ふと気づいた時、前方は葉桜の林だった。

春利は、葉桜の林へ入っていった。

と、春利の目に一瞬鳥居のようなものが浮かんだ。

見上げると、二人の女性が手をつないで浮かんで見えた。

やがて、結んだ二人の手が離れ、一方の女性が春利の方へ静かに降りてきた。


To Be Continued

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