2013/09/26

石和温泉にて

「おれ、週5日、介護施設で働いているんだ。休みの日は固定してないけど、ローテーションで、たまたま今日は休みだったんだ」

久と面と向かって会うのは40年ぶりだった。桑田はしきりと眼を瞬かせている久の目元に視線が行った。

「じゃあ、運が良かったんだね。施設ってどんな」

「認知症の人がほとんどだよ。車椅子の人とかも・・」

桑田は、休学して千葉の身心障害者の施設で入浴介助をしたことを思い出した。

午後1時を回り、二人はオムライス定食を注文した。

「この前の賀状で、民生委員やっているってあったよね」

「やっているよ。年間6万円くらいもらうけど、そんなもん、慶弔費や交通費でなくなっちゃうよ。結婚祝いとか、一人五千円包むから。家では、年寄りの介護もやっているし」

塚原になり、奥さんの親と同居していて、男親の面倒をみているのだろうと桑田は思った。食事やトイレや入浴介助など、家に帰っても施設の延長をやっているのだろう。

「久君も、養子に入って苦労したね」

「我慢よ、がまん・・」

45年ほど前、久は桑田と一緒に神学大学に高卒ですぐ入学した。桑田が2年目に休学して施設で1年ボランティアを終えて復学してみると、今度は、久の方が授業に出てこなかった。同じ寮にはいたのだが、アルバイトに出かけているようでめったに顔を合わすことはなかった。たまに廊下で会っても、どちらからともなく視線をそらせていた。

桑田はスプーンでせっせとライスを口に持っていったが、久は半分残し、スープの器を口に運ぶのだが、一口飲んではテーブルに戻していた。

久がゆっくりと席を立った。介護で腰を痛めたのか前傾で不規則な足取りだった。


To Be Continued

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