2013/08/27

石橋梨花と

春利が東京駅に着いた時、10時を過ぎたところだった。11時だから大丈夫、と自らに念を押したが不安だった。東京駅を利用したことはあったが、地下一階に行ったことはなかった。

階段を下りて中央通路に出た。上海でのネット検索では、八重洲口に近いとあった。地下中央通路を少し歩くと、
「銀の鈴待ち合わせ場所」の案内が目についた。まもなく、透明な四角柱の中に天井から下げられている大きな鈴が目に入った。3月11日の午後3時ころ、ここも揺れたのだろう、来未はこの駅を通って、と春利は思った。

最初気づかなかったが、すぐ後方に待合せ用の椅子が並んでいて、20人ほどの人が掛けていた。春利はしばらくそちらを見ていたが、空いているイスの一つに腰掛けた。視線はおのずと「銀の鈴」の方へ向いた。

「銀の鈴」の前に現れしばらく見回してからどこかへ立ち去る人がいるかと思えば、その場に数分立っている人、少し離れて携帯を耳に当てる人、しばらく立っていたが春利が掛けている方へやってくる人。月曜のその時間でも意外と多くの人が待合わせている。

梨花が時間より前に現れるかちょうど位にやってくるかは分からなかったが、互いの画像はメールの添付ファイルで送られていたし、春利の方は梨花の携帯番号も控えていたから、予定時間に現れなければプリペイドケータイで電話しようと思った。

春利はたびたび腕時計に目をやったが、11時10分前を確認した直後、透明な四角柱のカバーの方へ近づいてくる女性の姿に気づいた。

女性はちらっと腕時計に視線を向け、「銀の鈴」の透明なカバーの脇に立った。白のシフォンパフスリーブ半袖ブラウスにチャコールのスカート姿。背丈は1メートル60くらいだった。


To Be Continued

Sponsored Links