2013/06/29

ノラ猫と桜

桑田はラジオから流れるニュースに自ずと耳を傾けていた。

3.11の巨大地震関連の報道は、時がたつにつれて地震津波による直接被害より福島第一原発事故により放出されたセシウムやヨウ素131などの放射性物質の報道が多くなった。1から3号機から放出された放射性物質の量がチェルノブイリ原発事故と比べて多いとか少ないとか、どの被曝地域の人々は屋内退避とか別の地域へ避難すべきとかだった。

家を出た桑田は、小田急線町田で横浜線に乗り換え新横浜で降りた。午後の3時を過ぎていた。4月に入り、空は晴れていたが春風が吹いていた。この辺りでも空気中には放射性物質が舞っているのだろうか、とグラウンドの周辺をピンク色に染めている桜並木に目をやった。

橋の手前まで行った桑田は、橋を渡ろうか川沿いの道を桜並木に沿って歩こうかためらった。川の向こうには横浜労災病院や総合保健医療センター、リハビリテーションセンターなどの関連施設、その向こうにニッサンスタジアムの円形型建造物が変わらずそびえていた。

川沿いの道の先で自転車を止め、ベンチの傍らにしゃがみ込んでいる年配女性の姿が目に入った。桑田の足はそちらへ向かった。生活保護を受けている男が言っていたいつも餌を上げに来ているおばさんかもしれない。

自転車にリードをくくりつけ、犬を走らせている中年男性が通り過ぎた。

「毎日来ているんですか?」桑田は缶から皿に空けられた魚をゆっくりと食べている猫の方を見ながら言った。

「ええ、家でも猫を飼っているんだけど、おなじ猫として生まれてかわいそうだと思って」

おなじ猫として生まれて、という言葉が桑田の中で繰り返された。

「このこはエイズに感染しているらしいんだけど」

「エイズに・・」
桑田は、猫は喧嘩や交尾でエイズウィルスを持っている猫から感染するとネットで読んだことがあった。キャリアであってもエイズ発症しなければそれなりにやっていかれるし、人と猫との間では感染しないことも。と同時に、アメリカは州により同性婚を認めているとサト子がスカイプで言ったことを思い出した。もちろん、ほかの国でも認めている国があることを桑田は知っていたが、サト子の場合、自らのまわりにそういうカップルをごく自然に目にしているから、桑田の認識とはだいぶ違っていた。

ウォーキンググループと思われる年配男女が、桜の木の下で猫を見ながら話している二人にちらっと眼をやって通り過ぎていった。

To Be Continued

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