2018/05/22

父子の絆

「でも、地球に戻って来ても、すぐには授業は出来ないと思います」

「そうですね。頭や体がちゃんとしていてくれるといいけれど」

「その辺が一番気がかりですね。私は、彼らのテクノロジーを信じたいですね」

「何星か分からないけど、半年もの間、ずっと宇宙服みたいなのを着ていたんでしょうか?」

「私には、月に一度くらいしか映像が見えてこなかったけれど、春利さん、いつもそうしたものを着ていました」

「そうでしたか。じゃあ、何か地球人用の食事をもらって生き延びているんですね」

「だと思います。彼らは、以前から地球に来ていて、人間の食べ物のことも研究していたんだと」

「それは、すごいことですね。人間は、ほかの星からやって来た知的生命体の食事もですが、
彼らが何によってエネルギーを摂っているか、それよりなにより、
どのような種類の知的生命体が地球に来ているかさえも分からないんですから」

「ほんとうに、太古の昔から、いえ、地球が出来てから、人間より先にどれくらいの知的生命が
この地球に来ていたかも、ほんの少ししか分かっていないですね」

「それに、早乙女さん、ふだん人間の目には見えないけれど、地球の地下にも、住んでいるんでしょう?」

「そうですね。人の目に見える範囲は限られていますから。それに、別の空間とか言われたら、
ほとんど分からないですから」

「でも、早乙女さんのように、何光年も離れた世界が見える人もいるんですね」

「お父さま。夏期講習が終わって、4、5日塾の休みがありますよね。
次の授業が始まる前に一度そちらにおじゃまして、
春利さんが戻ってからのことをお話ししておきたいと思いますが。一両日中に・・」

「ありがとうございます。私は月に数回は川崎の自宅に戻りますが、
ほとんど春利のこの塾にいますから」

「了解です。いったん切りますが、電話にお出にならないときはメールを入れますので」

「あっ、はい。よろしくおねがいします。ほんとうに助かります」

To Be Continued

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2018/05/06

父子の絆

「塾長、まだだよね?」

夏期講習が終わる日、帰り際小6男子が桑田荘太に訊いた。

「ごめん。もうちょっと待ってね」荘太は心臓の辺りに痛みが走るのを感じた。

小学校低学年の女の子は、沢先生のおとうさんと言い、家庭での出来事を話してくれる生徒もいた。

このまま春利が帰らなかったら、とその都度荘太の胸が痛んだ。

その日、午後部の中学生の授業が終わって間もなく、固定電話のコール音が室内に響いた。

「ああ、お父さま。早乙女ミナです。今、大丈夫ですか?」

「あっ、はい。さきほど、中学生の授業が終わり、講師の先生も帰ったところです」

「たぶん、お父さまにとって良い知らせになるのではと」

「は、春利のことですか?」

「ええ。春利さん、元気とは言えないまでも、しっかりと生存してらっしゃいますから」

「早乙女さんの特殊能力で春利の何かが・・」

「はい。あの異星人と会話しているところが見えたんです」

「あの、連れて行かれた星で、ですか?」

「ええ。星の名前も分からないんですけど、室内のようなところで、春利さん特殊な宇宙服に包まれて」

「それじゃあ、あれから半年になるけど無事で・・」

「はい。それで、話している内容が地球へ帰ることです」

「春利が地球へ帰ってくる」

「はい。人間のロケットと違い、彼らの乗り物だったら、数日で地球に着くでしょうから」

受話器を握る荘太の頬に一筋の涙がこぼれ落ちていた。

To Be Continued

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