2017/09/27

地下都市

「じゃあ、ほんとうだったのね」

春利は、いったん箸を置き、水を飲み込みながら入力を続ける。

「梨花さんも、とうとうそうした世界が見えるようになってきたのかも」

「沢さんは、来未が地震で亡くなってからって言ってたわね」

「そう。しかし、縄文時代の人とかは、今の僕らよりずっとそうした世界が見えたのかもしれない」

「私には分からないけれど。それで、沢さんは、あの丸い乗り物でどこへ行ってきたの?」

「梨花さんが見た夢の中では、どこに見えた?」

「うーん。あれは別の星っていう感じではなかった。最初、日本の山のような所に沢さんがいたから」

「そこまで見えていたんだ。それで?」

「次の場面では沢さんが乗り物の中にいて、ほかにもう一人誰かいたけど、ちょっと様子が違ってた」

「じゃあ、あの乗り物の室内が見えた?」

「私の夢の中では、真ん中に何か円柱形ののような柱があって、周りに椅子のようなものが並んでいたわ」

「それで、僕が行った所は・・」

「日本の都会とは全然違う、場所。私も初めてみた建物というか建造物」

「うーん。その通り。あれは、地底に住んでいる・・」

「地底人」

「そういう呼び名が合っているかどうかは分からないけど」

「わたし、本で読んだことはあるけど、実在するのね・・」

「僕も信じられないけど」

「沢さんは、夢ではなかった」

「そういうことに。帰りはトンネルのような所を通って地上に戻ったようだけど」

「行きは違ったのね」

「訊く余裕はなかったけど、別な空間かもしれない」

「別な空間への入口がどこかにあるってこと?」

「梨花さん、すごい」

To Be Continued

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2017/09/17

地下都市

「動物の肉を食べるなんて野蛮な人間、か・・」

春利はカレーに入っている肉を口に運んだ。
フリーエネルギーの研究者が、食事中に不意に現れた地底人に言われたという動画の場面を思い出した。

地底人といっても、以前は地上に住んでいた種が、ある時期から住むようになった。
それにしても、地上と地下で、どうして大きな違いが生まれたんだろう?

と、テーブルに置いたスマホに着信のサインがあった。

「いま、授業中かな? もう、終わったよね・・」

梨花からのラインだった。

「久しぶりだけど、もしかして何かあったの?」

「いま、大丈夫? 実は、最近、夢を見たので」

「もう授業を終えて、ちょっとウォーキングしてうどんを食べに来たから。それで、何か僕に関係があること?」

「ええ。もしかして、現実かもって思ったので、訊いてみようと」

「どんな夢だったの?」

「どこか、普段あまり見ない景色の所へ行っていたわ」

「僕が、ってこと?」

「ええ。あの丸い乗り物に乗っていたわ」

「僕一人で?」

「いえ。沢さんよりちょっと小柄なひとが一緒だったけど、性別は分からなかった・・」

「それ、いつのこと?」

「何日か前のことだわ」

「当たっている。梨花さん、前からそういうことあった?」

「あまり記憶はないけど、今回、目覚めた後も、なんだかリアルな感じがして」

「う~ん。梨花さんも・・」

To Be Continued

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2017/09/16

地下世界

「先生、これ、高校ではもっと難しいのや高度な解き方とかあるの?」

「あっ、あるよ・・」

中3数学の授業で男子生徒に質問され、春利は突然数日前のことを思いだした。

あの日、地下都市を案内され、帰りはトンネル内を移動すると言われ、一瞬にして上空に出た。
春利を案内したのはロボットだと言っていたが、言われなければロボットだと分からなかった。
それまで思っていたロボットとはまったく違った。クローンなのか、それとも・・。

授業が終わり、外食しようと家を出た。星が見えた。

チカトシ。あんなに整然とした建造物が地下にあり、多くの知的生命体が暮らしている。
姿かたちは、地上の人とそれほど変わらない。
ただ、ずっと進んでいる。人間のように動物や魚の肉を食料にしていない。

やはり、はるかに進化しているということだろうか・・。

カレーうどんを注文した春利は、やっぱり訊いてみようと思いスマホを取り出した。

ミナは意外にも直ぐに返事を返してきた。ラインって便利だな・・。

「授業が始まったのね。・・私を地下へ案内したのは地上の人間の心というか、心理を研究しているカタだったわ」

「で、ミナさんの家の近くの上空にやって来て、ミナさんを八ヶ岳山麓の地下へ案内したんですね」

「ええ」

「地下のトンネルは利用しなかった?」

「帰りは、あのマシンに乗ったまま利用したわ。一瞬で地上というか上空に出て、ヒトケのない場所で降ろされたけど」

「彼らの地下都市って、地上とまったく違って整然としているんですね」

「そうね。地下を利用した無駄のない建造物っていうか。テクノロジーがどこまで進んでいるのか」

「でも、現在の人間は、あそこでは暮らせないよね。食べ物から始まって」

「そうね。彼らからすれば、人間は野蛮に見えるでしょう」

「まったく、人間の種ってどうなってるのか」

「確かに。元は同じだったかもしれないけど・・」

To Be Continued

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2017/09/11

地下世界

「着いた」

「もう!?」

「そう」

「どうして地下へ簡単に来られるの?」

「このマシンに乗れば、それが出来るんだ」

「人間には通れないルートを、このマシンは通ることが出来るんだね」

「そう。今回は人間が八ヶ岳と呼んでいるこの山麓の地下に、都市があることをあなたに知らせることが目的だ」

ロボットに従ってマシンの外に出た春利は辺りを見回した。
晴れた日の地上よりは明るくなかったが、円盤型のマシンの列がどこまでも続いているのが分かった。

「八ヶ岳の地下から、ここへ通じているルートはないの?」

「ある」

「それは教えられない?」

「今は許可されていないんだ」

「場所は教えられないが、人間が利用しているトンネルのようなものがあり、そこを浮遊するマシンで移動することが多い」

「トンネルの中を浮遊して?」

「そう。人間が地底人と呼んでいる存在は、マシンに乗らないで浮遊装置だけでも移動できる」

「やっぱり人間より進んでいるね」

「では、別のマシンで都市の一部を案内する」

春利は、二人乗りの軽乗用車くらいのマシンに乗り換えた。

「ここには、地上の人間と同じくらい多くの生命体が暮らしているの?」

「いや、地上の人間よりはずっと少ないが、遥かに文明は進んでいるし、戦争もない」

To Be Continued

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2017/09/06

地下世界

八ヶ岳の地下世界。春利は内心で呟き、草の生えた大地に手を広げた。

この山麓のどこかに地下への入口があるのだろうか?
春利は先ほど同時に下車した登山客の姿を追った。樹木で見えなくなっていた。
次のバスは当分やって来ない。そのまま帰るのだと、先ほどのバスセンターへ戻れば良い。

春利は上空に何かの気配を感じた。鳶だろうか。羽を広げた黒い固まりが雲の下を移動してゆく。

と、その時だった。上空の一点が左回りに回転し、春利は眩暈を感じた。
気のせいかな、と思ったが、回転が大きくなり、とつぜん雲間から灰色っぽい球体が現れた。

地底人も地上に来たときは空飛ぶマシンを利用している。
そうした思いが春利の脳裏をかすめた。

春利の体はゆっくりと光の渦に吸い上げられていた。

「僕をどこへ連れて行くつもり?」
眩暈を覚えながら、春利はマシンの床で言った。

「アナタが望んでいた場所へ」
人間の姿に似た春利より背の低い生き物が応えた。

「僕の望んでいる場所へ」

「そう。地下都市」

「山の下に地下都市があるの?」

「ある。そこへ案内する」

「山の中に入口があるんではないの?」

「あるが、人間には分からない」

「あなたは地底人」

「わたしはロボット」

「どうして、僕が今日来たことを知っているの?」

「あるカタから、たのまれた」

「誰から? サオトメミナさんではないよね?」

「ちがう。とにかくそこへすわりベルトをしめて」

「イナンナ?」

「そう呼んでいるニンゲンもいる。アナタにも、そのことを知らせておきたいらしい」

To Be Continued

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