2017/07/30

訪問者

『かれらのせいかつ』

春利は読みかけの本を伏せ、目を瞑った。

彼らは広大な宇宙ばかりでなく、人間が暮らしている地球の地下深くでも暮らしている。
我われの太陽系に関係するエリアにも、知らされていないだけでかなりの数の知的生命体が存在する。

会っている時も電話やメールでも、これまでミナは地球の地下で暮らしているヒューマノイドにはふれなかった。

一口に、ETとかヒューマノイドとか知的生命体といっても、この広大な宇宙にはさまざまな種類が存在するに違いない。
それが、次元が幾重にも重なっていて、それぞれの空間にそれぞれの生き物がいるとしたら・・。
仮に11次元だとしても。26次元だったらなおさら。

と、その時、横長のテーブルの上に伏せた本の傍らのスマホに着信のサインがあった。

「沢さん、先ほど私を呼ばなかった?」
ラインにメッセージが入ったのは、ミナだった。

「あっ、早乙女さん、僕の心がもう分かってしまったんですね」

「当っていたの?」

「じゃあ、僕が訊きたかったことも分かっているんだろうか?」

「不思議な誰かが、沢さんのとこに現れたこと?」

「やっぱり知っていたんだね。それが、早乙女さんの著書を読んでいたところなので、驚きですよ」

「そうだったのね。訊いてみないとそこまでは分からないけれど、私のところにときどき現れるカタかも」

「あの、半透明みたいだったけど」

「ええ。地球の内部に住んでいる彼らは、一般には地上の人にはあまりかかわりたくないようだけど」

「じゃあ、何かわけでも?」

「彼女は心理学者のような存在で、人に興味を持っているようなのね」

「そうなんだ」

「ところで、時間的に大丈夫なの?」

「合格発表も済んで、だいたい希望のところに合格できて一段落で、早乙女さんの本を読む時間が出来たわけ」

「あそう、良かったわ」

「それで、ミナさん。今はどこに?」

To Be Continued

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2017/07/25

訪問者

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地球の地下深く、マグマのその奥に地底人が住んでいる。
そこには太陽のようなものがあり、整然とした都市が存在する。
彼らは地球人より遥かに高度な文明を持ち、戦争などしない。
地上に出てくる時は、人間と見分けがつかない姿かたちで、
上空には空飛ぶマシンで行き、他の星々のETたちと交流もしている。

春利がミナの著書を手にしたのは、3月になってからだった。
小中学生の受験も終わり、そうした時間がとれた。

『かれらのせいかつ』と題されたその本のことが気になりだしたのは、
半透明の女性が春利の部屋に現れてからだった。

大学の講師をしていた早乙女ミナがとつぜん職を辞し、
本を出すようになった。リモートビューイングが出来るミナなら、
彼女の著書の中に、春利の疑問を解く手がかりがあるかもしれないと思った。

自らの身に次つぎに起こることを、いちいちミナに訊くことは憚られた。

部屋に現れた半透明の女性は誰だったのか?
なぜ僕のところに現れたのか?
世界中の、不特定人にある日突然あらわれているのか?

次元が移行しつつある・・
これまで見えなかったものが見えるようになる・・

一体どれくらいのETの種がこの地球にやって来ているのか。
こうしている間にも、地球人の教科書には載っていない名前も知らない彼方の星から、
新種のETがやって来ているのだろうか。

地球に、幾重にも重なっている別の空間から、
彼らはひょいとこの空間に姿を現したかと思うと、
突如消える。

ミナの本は、そこで創世記を引用している。

『我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。そして海の魚、空の鳥、
家畜、地の獣、地を這うものすべてを支配させよう。
神は御自分にかたどって人を創造された。
神にかたどって創造された。
男と女に創造された』

To Be Continued

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2017/07/18

訪問者

そんなことがあり、夕食は父からもらってきた切り餅にきな粉をつけ、野菜サラダと牛乳で済ませた。

「父さんも以前ちらっとそんなこと言ってたような気がして」
翌朝10時前になった時、春利の方から電話した。

「そんなこと言ったかな、憶えてないが・・」

「僕も、はっきりは記憶してないけど・・」

「うん、実は桜の木の下で見たことがある。それで、その半透明の人は、女性だったの?」

「後ろ姿しか見なかったけど、ソフト帽というかバスケットハットというか、そういったものを被り、昔の日本女性でいったら普通位の背丈で、ずんぐりしていた感じだった」

「スリープ状態のパソコン画面に映って後ろへ移動して行ったんだね」

「そう。フリーエネルギーの研究者は、そうした存在がしばしば現れると言っていた」

「今の時代って、次元が移行しているとかって聞くけど、我われは次元間を出たり入ったりしているっていうから、別の次元にいる彼らに会ってもおかしくないね」

「そのジャンルのリサーチャーの人たちが発信している動画を観ると、日本でもけっこうそうした存在に出遭っている人がいるようだけど」

「そうだね。昔はお化けとか幽霊とか言ってたけど、我われが無意識のうちに次元間を出入りしているんだと、見えても不思議はないね」

「ということは、あちらからこちらにやってきて、姿を見られても構わない場合は、半透明でなく実像でも構わないのかな?」

「その辺の区別は、直接彼らに訊いてみないと分からないね」

「父さんも具体的だね」

「あれ、実際に彼らのどの種とかは分からないけど、コンタクトを取っている地球人がいるんだろう?」

「うん。実際にコンタクティーだっていう人の動画も観たけど、世界には相当数いるんじゃないかな」

「春利もそうした存在に部屋で出くわしているんだとすると、言わないだけで、日本でも結構そうした人がいるのかもしれないね」

To Be Continued

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2017/07/13

訪問者

塾の授業が始まり、1月最初の日曜補講を午後2時から始めた。関数がいまいち分からないという5人の県立高校受験者のためだった。翌月半ばが受験日だったが、滑り止めの私立を受けていない子もいた。

SIMカードの1ヶ月分の料金体系のグラフをボードで描きながら、春利は自分の頃は携帯すら持っていなかったことを思った。

補講が終わったのは5時過ぎだった。

夕食をどうしようかと思いながら、ノートパソコンを立ち上げた。気になる動画を観ようと思ったが、始まってしばらくすると急に眠くなった。ソファに掛けた状態で5分とは眠っていなかったと思うが、ふと眼前の画面を見ると真っ黒だった。ボタンを押そうと思ったが、春利は画面を見つめていた。

春利の肩の辺りからソフト帽をかぶった女性が後方へ移動して行くのが見えた。春利の位置からは後ろ姿のままで、流しの前まで移動して行った。

春利は、目の前のパソコン画面に映ったその女性を画面上で追ったが、そこで姿が消えた。

どちらかと言ったら小太りで、背は高くなかった。

画面に映ったから見えたのか? 春利はしばらく考えた。着ているものは黒ではなく、どちらかと言ったら明るい色合いだった。

気配を感じたから目覚めたようにも思われる。それにしても、足音はしなかった。歩いているというより浮遊して移動して行った感じだった。

半透明。地底人?

春利は、クリーンエネルギーの研究者が、ときどき現れてヒントをくれる、と言っていた訪問者は半透明の地底人だと動画の中で言っていたことを思い出した。

その姿をどこかで見かけたような気がしないでもないが、後ろ姿で移動して行ったし、誰? と訊く余裕などないままに消えてしまった。

誰かは分からないが、ETの類だとすれば、春利が驚かないように姿を変えて現れたのかもしれない。

再度スリープ状態になっている画面を見たが、室内のあれこれが映っているだけだった。

「UFOも幽霊もみな同じものだと思う」降霊術を扱っているというある女性が動画で言っていたのは、異次元の存在が我われの次元に現れてまた別の次元に移動して見えなくなる、ということを言ったのではないか。

To Be Continued

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2017/07/02

奇妙な会話音

その夜、春利は父と歌番組を観ながら、徳利一本だけだったが2人で日本酒を酌み交わした。

父が買って来たという薄いプラスチックの器に入ったお節を小皿にとって食べた。

「一人だったら泊まる布団はあるから大丈夫だよ」

「ここだったら陽当たりも良いし、布団も干せるから良いね」

「うん。春利のところも南側は陽が射すだろう」

「そう。前の建物との間がここと同じように芝生があって、晴れると眩しいくらいだよ」

11時を回った時、父の勧めで風呂に入り、床に就いたのは12時過ぎだった。

目の前にいたのは、かかりつけのクリニックの医師みたいだった。

何か力比べが始まっていた。医師の思い通りに物事が進んでいった。

完全に負けてしまった春利は、医師が願ったことがすべて敵わなくなるよう願った。

すると、今度は春利の思い通りに事が進み勝ち続けた。

隣りの部屋から父の寝息が聞こえる。置時計の針が3時を回っていた。
春利は足音を忍ばせてトイレに行った。

「キュルキュル・・キュルキュル・・ワイウーワイウエー」
どこかで聞いたような・・という思いがわいて来た時、春利は再び目覚めた。
やはり、隣りの部屋から父の寝息が聞こえる。

「キュルキュル・・キュルキュル・・ワイウーワイウエー」
春利はスモールランプの明りを見た。夢じゃない。

別べつの種の話し声だろうか? 意味は分からない。

To Be Continued

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