2017/01/31

ミナの行方

春利が次のメッセージを読んだのは、翌日の中学生の授業が終わって間もなくのことだった。妙な予感というか急かされる思いが込み上げてきた。

スマホのラインにはやはりミナからメッセージが入っていた。

「突然プアビさんから案内があり、これから賀茂川の岸辺に向かうけど、スマホは置いていきます」

いつ発信されたか気になり、日付と時間を確認した。

きのうの夕方5時過ぎ・・。春利は前回のメッセージの日付を見た。3日前だった。そう言えば、スマホの電源は入れたが、ラインはチェックしなかった。

春利は、ミナがプアビから、彼らと地球人の架け橋になって欲しい、というメッセージをもらったと以前言っていたことを思い出した。賀茂川の岸辺で空飛ぶ乗り物に出くわしたことは、ミナから数年前に聞いたが、あのとき現れたのは小さなヒューマノイドで、プアビが関係している種ではないと思う。

プアビと言ったら、以前春利が遭遇したマリアさまと関係があると、ミナから聞いた話で思い当たった。

それにしても、現在、空飛ぶ乗り物で宇宙空間を移動しているに違いない。春利は、ふーっと大きく息を吐き出した。前回ミナが、プアビというETに出遭った時は、確か葉巻型の巨大な乗り物だったと言っていたが、何という星の上空へ行ったのかは、ミナにも分からないし、教えてもくれなかったのだろう。

春利は中学生の授業が終わったら夕食の買い出しに行こうと思っていたが、その前にやってみようと思った。

ソファに掛け直し、静かに目をつぶり合掌した。数回ゆっくりと深呼吸した。やがて浮かんできたのは、乗り物の室内だった。そこにいるのは、ミナに違いないと思った。人間とは違うヒューマノイドが2人いるのが分かったが、女性という感じではなかった。

「ミナさん。僕です。春利です。分かりますか?」2人の操縦士の横にいるのはミナに違いなかったが、何の応えも返ってこなかった。春利はもう一度試みたが、やはり反応がなかった。

春利は目を開き、再び大きく息を吐き出した。ミナと接していつの間にか始めた習慣だったが、まだ力不足だと思った。

春利は、エコバッグを手に表へ出た。

ミナからの連絡を待とう。近くのスーパーまでは、歩いて5分余りだった。

To Be Continued

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2017/01/29

ミナの行方

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ミナが乗っていたのはスカウトシップと呼ばれるものだろうか。どの空間を超高速で移動しているかは、ミナには分からなかった。

乗った場所は、以前カナと彼らの空飛ぶ乗り物で接触した賀茂川の川べりだった。

知らせは、プアビからだったが、ミナにとっては突然だった。言われるままに体が動いていった。
迎えに行くのは私ではないとプアビは言った。辺りは暗くなっていて、上空は雲で覆われていた。

上空に吸い上げられ、気付くと機内にいた。操縦席にいたのは、ヒューマノイドの顔をした二人だったが、地球でいうロボットではないかとミナ思った。ロボットと言っても、理性も感情もあり、私よりは良くできているヒューマノイドに違いないと直観的に感じたが。

直ぐに座ってベルトを締めるよう案内された。別の空間に入るのだろうと思い窓の向こうに目をやったが、すでに地球の風景は何も見えなかった。フライングオブジェクトの外はどうなっているかまったく分からない。地球の列車でトンネルに入っている時とも地下鉄に乗っている時とも違っていた。地球上での闇とも違い、例えるならジャンボジェットで上空を飛んでいるが、外には何もない状態といった感じだった。別次元との壁は二酸化炭素なのか何なのか、具体的なことは思いつかなかった。

春利がミナからの連絡を確認したのは、塾が夏季講習に入って2週間余りたった時だった。それなりに忙しいのだろうと、あえて春利からは連絡しないようにしていた。梨花とは連絡を取り合っていたが、ミナからはその間一度も連絡が入らなかった。

夜中にラインに入ったメッセージを読み、春利はしばらく呆然とした。

ミナが大学講師を辞めたというのだ。別名で書いていた小説がそれなりに売れ、辞める決心がついたという。

出版した本が予想以上に売れたって? 

春利は初めて聞いた。ミナが小説を書いていたなんて。それまで一度もそのことにふれたことはなかった。

思えば、震災で行方不明になった来未のことがきっかけで春利の前に現れたが、不思議な現れ方だった。

「それで、今、ミナさんはどうしているんだろう。もしや?」という思いが込み上げてきた。

To Be Continued

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2017/01/15

新たな遭遇

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どす黒い波がすさまじい勢いで人家をさらってゆく。どこかの屋根の上からだろうか、春利はその様子を見守っている。両手を挙げ、叫びながら呑みこまれてゆく人に手を差し伸べようとして、自ら荒れ狂う海へ転落していった。

真夜中に目を覚ますと冷たい感触が伝わって来た。暗闇の中で上半身を起こし、両手を挙げて助けを求めていたのは誰だろうか。来未のようにも思われたが、そうでないかもしれなかった。

春利は起き上がり、電気を点けてパソコンの電源ボタンを押した。 タオル地のハンカチで体の汗を拭き、ネット画面が立ち上がるのを待った。

2011年3月、東日本大震災で行方不明になった人を検索した。その後新たに見つかったいわき市の人はいるだろうか。

2012年3月では、福島県での死者は1605名、行方不明者は214名で、いわき市だけでは37名。それが1年後の2013年では、1606名、211名、そして、いわき市だけの行方不明者数は、0名となっていた。

さらに2014年は、1607、207、0。福島県内の死者は1名ずつ増え、行方不明者は減り、いわき市内の行方不明者は無くなった。

その後の消息が分からない来未や両親それに来未の友達・春海は、いったいどうなってしまったのだ。梨花が、その後何か分かったことはないかと帰省したが駄目だった、と小声で春利に言ったのは2カ月ほど前だったろうか。

疑問が膨れ上がった春利は、さらに調べつづけた。すると、行方不明者の考え方は、総務省統計局と警察庁では異なるとある。全国では2万人近い死者・行方不明者を出した震災だが、神奈川県より西のエリアでは死者・行方不明者はいない。来未の両親と友達の春海は福島県に住んでいたが、震災のあの日いわき市に帰省した来未は、職場がある名古屋に住民票を移していただろうか。

検索を絞り込むと、年を追うごとに遺体が見つかっても、損傷が激しかったり腐敗が進み、部分遺体も多くなっているということが分かった。そうなると、歯型確認やDNA鑑定でも、死体検案書には、「不詳」と書かれ、「身元不明遺体」となってしまう場合が多いのだという。

春利は、夜が明けるまでもう少し眠ろうと思った。ベッドに戻り眼をつむった。シャンハイの公園で、来未と春海が桜の木の上に現れたのは現実だったのか夢だったのか、あるいは、やはり別の空間を垣間見たのか。

To Be Continued

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2017/01/11

新たな遭遇

風呂から上がり、翌日の授業の準備を始めた春利の脳裏に、一つの疑問がわき上がって来た。それは、父と電話で話している間に浮かんだ疑問だったが、話が展開するうちに忘れたことだった。

谷川良治が小学2年のときに行方不明になり、20年以上も経ってから金星の地下にいることが分かったが、良治の両親はいったいどうしているのだろうか、ということだった。

春利は目をつぶり、そのことを知りたいと念じた。しかし、何も浮かんで来なかった。良治が行方不明になった当初、両親は捜索願を出したりいろいろしただろうが、長い間良治の伯父である渋江真佐雄氏が事実を伝えていないことはないだろうと思った。

それについてはミナに訊くしかないと思い、春利は早速メールを送った。ミナも大学の授業ばかりでなくいろいろ多忙なことがそれまでの経緯で想像がついたから、電話やラインはしないで待つことにした。

「遅れてごめん・・」から始まる返信が来たのは、2週間後の夜だった。

読み終えた春利の脳裏にさまざまなことが浮かんできた。良治の両親は、良治が行方不明になって数年後、アメリカのニュージャージー州に移住したというのだ。そして、現在は良治と会ったり連絡を取り合っているという。ミナは、リモートビューイングで分からなかったことは、フィンランドに留学中のいとこ・カナにメールで訊いたという。

それにしても、ここ数年の間に自らの周辺で起こっていることが、春利にはどれも衝撃的に思われる。不思議な空間で良治と出会い、小学生のときに行方不明になった良治が金星の地下にいたこと。良治の伯父がエネルギーの研究者で、春利の父の郷里に近い所に時空装置のある別荘を持っていたこと。良治がその別荘へ幼い頃から行っていたであろうこと。良治は、ミナの教え子であるカナと従兄妹だったこと。

さらに、自らの周辺に現れる空飛ぶ物体やETたち。5年前までは想像もできなかったことが起こっている。ふり返ってみると、それらの始まりは来未の死に行き当たる。2011年3月11日。そこから始まったのだと。・・

To Be Continued

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2017/01/04

新たな遭遇 Translucent humanoid

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「あの時空装置のある別荘の持ち主が、タニカワリョウジという人のオジさん?」

「そう。フィンランド留学中のカナさん。つまり、渋江カナさんの父にあたる人で、渋江真佐雄っていう人。その人の妹が良治の母親」

「それはまた不思議なつながりだね。もしかして、DNAが違う?」

「それは分からないけど、渋江真佐雄さんは、ETのことを良く知っているか、彼らと深い関係があるかもしれない」

「その分野の研究者なんだね」

「アメリカにも留学しているし、父さんが良治のことでふれたように、現在火星で何かを研究しているかもしれない」

「そういうことだったのか。月にしても火星にしても、金星も、いや太陽系の惑星には、秘密がいっぱいのようだね」

「宇宙のどの星もそうかもしれないけれど、父さんも、その辺まで行っているんだね」

「まあね。それで、春利の方は何があったの?」

「住まいの近くの通りの向こうに不思議な生き物のようなものを見て・・」

「人間とは全く違っていたのかい?」

「まったく似ていないとは言えないけど、背も高く、何より半透明というか」

「半透明なヒューマノイド。う~ん、初めて見たんだね」

「そう。僕に何か伝えようとしているんではないかと」

「そうかもしれない。彼らは光をコントロールできるのかもしれないね。それを使って春利に何かを伝えようとした」

「父さんはホログラムって聞いたことがある?」

「言葉は知っているよ。しかし、彼らは必要に応じて使いこなしているのかもしれないね、光を」

「人間より5万年は進んでいると読んだことがあるけど」

「彼らのテクノロジーは人間には想像もできないね。先ほどの科学者の渋江さんという人は、惑星間を行き来できるとしたら一般の科学者には踏み込めない領域まで行っているかもしれないね」

「うん。たぶんね」

To Be Continued

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