2016/10/27

新たな遭遇

春利はカーテンの間から差し込む光を感じた。時計の針を見て、塾の授業のことが頭に浮かんだ。焦って起き上がった。12時近かった。何があったんだ・・。

ようやく記憶をたどりよせることが出来た。夢ではなかった。公園から、あの乗り物で・・。ということは、今日は日曜日で間違いない。

テレビを点けるとニュースをやっていた。夜中に公園で降ろされ、戻ることが出来たがなかなか寝付かれなかったんだ。だからこんな時間まで寝過ごした。大丈夫、記憶を消されたわけではない。今日は日曜日で、補習授業はない。大きく息を吐き出してソファに寝転がった。

顔を洗って戻ると、冷蔵庫から野菜ジュースをだし、牛乳パンをかじりながら記憶をたどった。

円盤型の乗り物でアフリカ上空へ行った。灰色の大地に緑が点々と見えた。操縦している宇宙服の相手から、アブズ、ジンバブエ、というメッセージが届いた。ずっと下方に、円形の囲いで被われたものが見えた。グレート・ジンバブエ遺跡。半分緑の樹木で被われていた。遠い昔、この辺りで現在の人間の祖先が創られた、と言っていた。詳しいことは何も分からなかった。

僕は、内心ずっと怯えていたんだ。あれで最後になるかもしれないとも思った。しかし、無事に戻された。それにしても、あの円盤型の乗り物に乗っていた3人は人間とは違っていた。あのイナンナと言われるマリアさまも、ほんとうはあのような顔をしているのだろうか。宇宙服や被り物を脱いだ素顔を人間には見せないのかもしれない。縄文時代はどうだったのだろう。

と、その時室内のブザーが鳴った。

もしや、生徒かもしれないと春利は玄関に向かった。

「ごめん。連絡付かなかったので、来てみました。おじゃまですか?」

「梨花さん・・」

To Be Continued

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2016/10/23

新たな遭遇

「おそれることはない。わたしはあなたを食べはしない」

「イナンナ・・マリアさまが、僕にアフリカを見せるようにと?」

「そうだ。あなたはアフリカへは行ったことがないだろう」

「ないけれど、どうして僕にアフリカを見せるようにと?」

「それは、地球の人間の祖先に関係しているからだ」

「おおむかし、アフリカで別の惑星から来た方により、我われの先祖が金の採掘のためにつくられたという?」

「そうだ。イナンナは、今後のために、あなたにも歴史の流れを知っておいてもらいたいと思っているのだろう。当時と現在ではだいぶ様子も違っているだろうが」

「なぜ僕なんだろう?」

「それは、あなたの祖先にマリアの存在を信じていた人がいたからだろう。さあ、ここが南アフリカ上空だ。地球の時間だと昼過ぎだから、もう少し下へ行けばその様子があなたにもわかるだろう。下から人間には見えないし、レーダーにも捉えられないが」

春利が再び公園の芝生に下ろされた時、辺りは静まり返っていた。周回路に沿ってともる常夜灯を見た時、春利は全身の力が抜け落ちたような状態だった。

広い芝生の広場を横切り、反対側の常夜灯の下まで行った時、春利は思い出したように腕時計の針を見た。時計の針は午後8時過ぎで止まっていた。

惑星ニビルでは、大気と地熱が失われつつあり、それを保全するために金の粒子でシールドする必要があった。それが理にかなった理屈かは不明だったが、春利はどこかで読んだことを思い出した。ニビルと言われている謎の惑星Xから、地球に金を採掘に来た。重力の異なる地球での採掘作業に耐えられなかったETたちのために、作業員としての人間を地上で創造した。彼らの遺伝子と地上の生き物との間で。・・

車は一台も走っていなかったが、春利は青信号になるのを待って車道を渡った。自分の感情とは別に、敷かれている一つのレールを進んでいる己を見る思いがした。

To Be Continued

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2016/10/20

新たな遭遇

春利の後ろを会社帰りの中年男性がせかせかと行く足音が聞こえる。

と、上空で何かが光ったようだった。雲間に星も見えるが多くは雲で覆われている。来たのかな?

心臓がドクドク打っていたが、春利は上空から眼を反らすことが出来なかった。しばらくして、気になってベンチの周囲に眼をやった。春利の眼も暗闇に適応していたが、人の姿は見当たらなかった。前方の樹木で囲まれた広い芝生の向こうに常夜灯の明りが霞んで見えた。

来るとすれば、周囲に人影がないことを確認しているに違いない。・・

「いま、あなたの上空の雲の上にいる。すぐにそこへいく」

上空から伝わって来た意思を受け止め、春利は緊張した。すると、雲のあいだから灰色の円盤が姿を現した。思ったより小型のそれを見つめていると、春利の方へ白い光の帯が向けられるのを感じた。

と、同時に春利の身体は上空に吸い上げられていった。

気がつくと、春利は乗り物の室内にいた。

「そこへかけてベルトを締めなさい」

春利は言われたとおりにした。6畳間くらいの室内には、意思を伝えてくる存在の他に二人の宇宙服に被われた者がいたが別な方を向いているようだった。

「それで、今回はどのような用事で僕をここへ?」

「あの方が、あなたにアフリカを見せるようにと」

「あの方とは、もしや?」

「そう、あなたたちがイナンナと呼んでいるお方だ」春利は、意思が伝わって来た相手の方を初めて正面から見てギクリとした。つりあがった大きな眼は人間とは明らかに違っていた。宇宙服のカバーを通して相手の口を見た時、春利は思わず記憶をたどっていた。法隆寺のトカゲのそれ。気が遠くなるのを春利はかろうじてこらえた。

To Be Continued

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2016/10/14

新たな遭遇

新学期の授業が始まって二日たった。梨花には、早乙女ミナさんの都合に合わせて彼女が京都へ戻る前に3人で会おうと話していたが、武蔵野へ帰ったミナからは何の連絡も入らなかった。翌週からはミナも大学の授業が始まるから、数日のうちに連絡が入らなければ、今回は無理だろうと思ったが、春利から催促するのも躊躇された。ミナには生家の両親もいることだし、いろいろあるのかもしれなかった。

その日は土曜日で、春利の塾へ通っている生徒は皆週5日制授業を実施していたので、午前中に小学生、午後1時から中学生の授業を行った。夕食は自炊しようか迷ったが、最寄りの店へカレーセットを食べに行った。
「早乙女さんからは連絡がないので、今回は3人で会うことは無理だと思う。生家の両親も若くはないのでいろいろあるのかも・・」ラインでメッセージを送り、春利は店を出た。

帰宅した春利は緑茶が飲みたくなってガスコンロに点火した。7時になるところだった。カーテンに手をやり、日が長くなったと窓の向こうに眼をやった。しかし、その日は何故かテレビもラジオも点ける気が起きなかった。梨花はどうしているのか、送ったラインは未読だった。

ソファに掛け、お茶を一口飲んだが、いつの間にか眠ったようだった。目覚めた時は、8時を回っていたが、いつか経験したような気分になっていた。ああ、また来た、という感じだった。誰かが呼んでいる。春利は薄手のジャンパーを着て黒いキャップを被った。
抵抗する気は起きなかった。

ドアに鍵をかけ下へ降りて行った。呼んでいるのは誰か予測がつかなかった。幹線道路の歩道を行き、地下鉄駅前広場から別の車道の脇を歩いていた。車のライトが後ろから押して来たり反対車線からトラックがやって来るのが分かる。催眠状態ではないが、抗う気が起きないままなだらかな坂道を上っていた。

一人で来ることも多いが、ミナとも梨花とも会ったことがある公園。信号機のある横断歩道を渡たった。入口に車止めの金属ポールが並んでいる。舗装された広い路は急こう配で下り、前方には樹木に囲まれた広い芝生が広がる。常夜灯の明かりがところどころに影を落としている。柴犬の散歩を終えた青年が坂を駆けて来る。

一面の芝生を踏みしめ、春利は遠くに見えるベンチを目指す。やがて現われるであろう存在に胸の鼓動を覚える。広い芝生の切れ目に弧を描くように等間隔に並ぶベンチの一つにたどり着いた。

「前回もここだったな」座ってから春利は内心で呟き、塗料のはげたベンチの板に手を当てゆっくりと上空に眼をやった。

To Be Continued

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2016/10/02

太陽系外惑星

夕方、両親のいる武蔵野へ行くというミナを春利は地下鉄駅へ送っていかなかった。立ち上がった春利を、ミナが制した。授業の準備があるだろうから送らなくていいとミナが言った。

ドアの向こうへミナが消えてしばらくして、春利はミナが再び連れ去られはしないかと不安になった。彼らと人間との懸け橋と言っても、彼らにも複数の種があるから、そんなに簡単にいくだろうかという思いがあった。父の生家の畑にある巨石を運んできたのはどのエイリアンだろうか。

春利はその日の夕食は作らず食べに出ることにした。

ミナは横浜で無事に乗り換えただろうか。カナさんは、フィンランドの大学でどうしているんだろうか。京都の大学を辞めてフィンランドで神学を学びたいなんて、ほんとうにみんなどうなっているんだろう。カナさんのいとこの谷川良治は、今も金星の地下で暮らしているのだろうか。カナさんの父親は現在どこにいるんだろう。

春利はいつもいく店とは別の、徒歩で30分ほどかかる所にある蕎麦屋へ行くことにした。簡単な問題でないことは分かっていたが、頭の中を整理したかった。薄暗くなっている上空を時折見上げた。雲間に月が見えたが、彼らの空飛ぶ乗り物は見えなかった。地震の津波でさらわれ、現在も行方不明のままの来未の顔が浮かんできた。

すると、家族で一人だけ生き残った梨花のことが気になった。歯科の予約があるからとミナに会いに来なかったが・・。

と、着信音が鳴った。

「今日はごめん。先ほど戻ったんだけど、ミナさんのことが気になって」

「ああ、歯の方はどう?」

「ええ。何回か通うことになるけど。それより、ミナさんどこへ行ってきたのか知りたくて」

「先ほど帰ったけど、惑星Xの上空と言ったら良いのかな? ミナさんも星の名前は分からないけど、あの新横浜公園の上空から消えて、しばらくしてスカウトシップに乗り換えて、惑星Xに向かったみたい」

「惑星X。それって、太陽系の外惑星で、一番外側の・・」

「ほかにも、発見されていない星があるかもしれなから何とも言えないけど、回っている方向が違っている惑星ではないかと思うけど」

「それで、誰に連れられて?」

「それが、マリアさんでもプアビさんでもなくて、別のアンドロイドというか。プアビさんに連れて行くように頼まれたというんだね」
反対側から歩いて来た春利と同年齢ぐらいの男が、すれ違ってから奇妙な表情で春利の方を振り返った。

To Be Continued


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