2016/03/31

夢のしらせ

「早乙女さんは、僕と梨花さんがこうして話していることをすでに知っているのではないかと思います」

「それは、どういうことですか?」

「僕が連絡したとかではないですよ。あの人はリモートビューイングというか、そう、見えるといった方がいいでしょうか」

「それは、特殊な能力があるという意味ですか?」

「人間的にはそういうことになるでしょうか」

「と言いますと?」

「ええ。いわゆる彼らETの存在は、人よりずっとそうしたパワーを持っている知的生命体ということですね」

「それでしたら分かる気がします」春利はふと気になり上空に眼をやったが、梨花もすぐさま反応して視線を上に向けた。

「沢さんには、何か見えますか?」

「いえ、見えないけれど、見られているような気がするんです」

「それは、早乙女さんのこと? それとも・・」

「断定は出来ませんが、何かが見ているというか」

「沢さんにも、そうした能力があるのかもしれませんね」

「いえ、人には本来そなわっているのかもしれませんよ」

「沢さんには、来未が見えますか?」

「シャンハイにいたとき、いくどか来未がやって来たのでは、と思えることがありました」

「それで、早乙女さんにはいつ会えますか?」

「後でメールしてみます。早乙女さんは京都の大学で講師をしていますが、年末年始には東京の生家へ来ると思うので、都合を聞いてみます」

To Be Continued

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2016/03/30

夢のしらせ

「不思議と言えば、来未が行方不明になってから、不思議なことが次つぎと起こっているんです」

「来未がいなくなってから?」

「ええ。梨花さんは、UFOを見たことがありますか?」

「わたし、あの震災の時、不思議なものを・・」

「地震があった時に、何か見たんですか?」

「上空に、風船のようなものがいっぱい飛んでいて。眼の錯覚かと思ったんだけど、後からネットで観ていて、あれってUFOではないかと」

「風船のような丸いものが大量に空に現れたっていうの、よく映像が出ていますね」

「沢さんは何か?」

「ええ。いくども遭遇しています。空飛ぶ乗り物だけではなくて」

「ということは、直接出遭ってもいるということ?」

「ええ」二人は金網ネットが張り巡らされた運動場の横を上がり平らな広場へ出た。親子でボール遊びをしている家族の横を犬を連れた若者が駆けていく。樹木の向こうの芝生の広場には高校生ぐらいの男女がバレーボールで遊んでいるかと思えば、バトミントンをしている家族も見える。

「広い公園だけど、来ている人も多いですね」

「今日は日曜ですからね」春利は桜の木の下の空いているベンチを指さした。

「この公園のあちらのベンチに掛けていたとき、上空からあの乗り物が現れて」

「その時は、沢さんの他に誰かいなかったんですか?」

「いたかもしれないけれど、僕は気づかなかった。彼らは、上空で見ていてタイミングよく降りて来るんだと思うけど、眼も人間の何倍も良いようだし」

「それで、その彼らに会ったんですか?」

「ええ。ETの一つの種だと思うけれど。そのことで、今度、梨花さんにも、僕の友達の早乙女ミナさんと会ってもらいたいと思うんです。実は、僕が早乙女さんと出会うことになったのは、来未のことがあってからなんです」

「来未がいなくなったことと、その早乙女さんが関係している」

「そうです」

To Be Continued

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2016/03/28

夢のしらせ

空いているベンチを目指して広い芝生を横切っていた時、ボケットで着信音がした。

「石橋梨花です・・」

「沢です。ご無沙汰」

「市内なので自宅の方に電話してみたんですが、留守電になっていたのでこちらに」

「それで、今はどちらに?」

「いま、JR横浜駅の改札を出た所です。日曜だったら時間が取れるとメールで読んで」

「それじゃあ、僕は今、地下鉄の岸根公園駅のそばの大きな公園に来ていますから、良かったら、そこから西口の方に出て、地下道から地下鉄でこちらへ来られますか。地下鉄の岸根公園駅出口2で待っていますから。・・30分もかからないと思うから・・」胸の高鳴りを覚えながら、春利は公園の周囲を巡っている広い歩道に出てゆっくりと公園の下の方にある駅へ向かった。

ぐるっと巡り、舗装された坂道を降り切ったところに地下鉄の岸根公園駅出口がある。

出口2に近づいた時、春利はこれまで気づかなかったことに思いが行った。ミナが岸根公園へ来た時、春利は地下鉄の出口が一つだと思っていたが、その後四つあることが分かった。あの時ミナには出口の番号を知らせなかった。それなのにミナは途中で春利に問い合わせることもなく春利の待つ2番出口に現れた。

やっぱり、ミナには特殊な能力が備わっている。と、その時、大勢の人の気配がして人の姿が現れた。地下から上がって来るときはエスカレーターを利用する人が圧倒的に多いだろう。その人の群れから少し遅れて、見覚えのある梨花が現れた。二人は目線で頷きあった。

「ここが篠原池で、この真下に、梨花さんが下車してきた駅があるんですよ」春利はそう言いながら、ミナが来た時に同じことを言ったのを思い出し横を向いて苦笑した。梨花はこっくりして側の池を眺めた。池の中ほどに架けられている木製の歩道の下を鴨が数羽泳いでいる。

「こちらの方から行ってみましょうか。あれが県立武道館です」春利は降りてきた歩道を上がらずに幹線道路に沿っている歩道を進んで右手を指さした。

「私、沢さんはまだシャンハイにいるものとばかり思っていました」

「僕も、梨花さんは福島で、伯父さんがやっていた工務店で経理事務を続けているものと思っていました」

「不思議ですね。私は家族がいなくなった郷里をいったん離れてみようと思った時、なぜかヨコハマが頭に浮かんだのです」

「そうでしたか」

To Be Continued

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2016/03/22

夢のしらせ

来未の姉・梨花と東京駅で会ってから2年半近くになるだろうか。梨花とはその後何の連絡も取りあっていなかった。来未の姉・梨花とは同学年だが、春利より半年余り年上だったことを思い出した。

梨花は、春利が現在も上海に勤務していることとしてメールしてきた。

行方不明の両親と来未は見つからないままだが、東日本大震災の被災者には特例措置として、行方不明者の場合でも死亡届が受理されれば生命保険金を受け取れることになり、そのお陰でいわき市の市営墓地にお墓を用意出来たが、両親と来未の3人の遺骨のない墓参りをしても空しい、と。

メールの後半には、梨花は郷里を離れ横浜市戸塚の駅に比較的近いマンションに住んでいる、と。そこまで読んだ春利は、現況を記してすぐに返信した。二つの電話番号も知らせたので、すぐに連絡が取れるだろうとうれしい気持ちになった。

トーストと野菜で簡単な朝食を済ませた春利は、大きく息を吐き出した。何か連絡があるかもしれないと、朝食の前にパソコンとスマホをチェックする週間がいつの間にかついていた。

震災では寺や墓地も流されたところがあったという記事を思い出した。家ごと家族が津波に持っていかれた場合、そして遺体も行方不明のまま数年たったとしたら、生き残った人の思いはどんなだろうか。福島の場合、それに放射能汚染の問題が大きな影を落としている。県内に転居するといっても拭い去れない問題だ。

両親や妹が行方不明のまま家もすべて流されてしまった。伯父が始めた工務店の事務員として伯父が病死した後も勤めていた職場も辞め、思い切ってこの4月に横浜へ来たという。

返信後、春利はいくども梨花のメールを読み返した。じっとしていられなくなり、固定電話を留守電にして家を出た。足はいつも訪れる岸根公園に向かっていた。

僕の運命というやつは、いったいどうなっているんだ。春利は上空に眼をやった。あのお方、マリアは僕を見ているんだろうか。秋晴れの良い天気で、空飛ぶ物体は春利の肉眼ではとらえることが出来ない。前方を行く家族連れが横断歩道を渡り公園に入っていくのが見える。小学生が両手にボールを抱えている。自転車にまたがった子供たちが公園沿いの歩道を下の方へと移動して行く。武道館へ向かうのだろうか。

To Be Continued

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2016/03/19

夢のしらせ

秘密の家を後にした春利と父・荘太は信濃境駅まで歩いた。信濃境へ行ったら一度は父の生家に行ってみたいと春利は思っていたが、そのことはすっかり忘れていた。父もそのことにはふれず、やって来た上り電車に二人して乗った。

八王子で横浜線に乗り換え、荘太はそのまま家に戻ると言い、小田急に乗り換えるため町田で先に下車した。残された春利は地下鉄には乗りかえずに小机で降り、歩いて帰ることにした。

幹線道路沿いに歩きながら、父さんも疲れたんだろうな、と父の顔を思い出した。確かに、偶然にしては出来過ぎている。あの方は、と春利は上空に眼をやった。雲間に青空が見えたが、空飛ぶ物体は眼に入らなかった。

家の近くまで歩き、いつも入るすき家の丸い椅子に掛けるとどっと疲れがやって来た。小中学生相手の塾の方は毎日それなりの気遣いが必要だったが、生きざまを脅かされるようなことはなかった。そのことが救いだった。子供たちと接していると、年の離れた兄弟のようでもあり、家族のようでもあった。父兄からの連絡票を読んでいると、自らの子供時代と重なり、家族の大切さを実感し、この地球という星で生活していることに喜びを感じた。風呂に入り、その夜は熟睡できた。

塾の方は大きなハプニングもなく進めることが出来たが、11月の末近くになって理解不能の夢をみた。夢の中では、生徒から質問された期限付きの問題に取り組んでいた。容易に答えが導き出せず必死に考えていた。目覚めた時、現実にはそうした問題はなく、日曜日でありその日生徒の補習もないことを思い出した。しかし、不可解な思いは夢から覚めてから春利の中で増幅していった。

夢の中で、生徒の背後でずっと春利を見つめている存在があった。

「あれは、誰だったのだろう?」ベッドで上体をおこして夢の中の存在を追った。どこかで会ったような気がしないでもないが思い出せなかった。人は、見ず知らずの人の夢をみることがある。実際は、会ったことがある人が別の姿かたちで現れたのか、それとも、相手の方が何らかの目的で会いに来たのか。夢とは、そもそもわけが分からないものかもしれないけれど、ほんとうは根拠のあるものなのかもしれない。

夢の中に現れた人が誰かは分からなかったが、夕方になり、外食に出かけて戻ってくると、パソコンに一通のメールが届いていた。

石橋梨花。春利の頭の中を一抹の不安がよぎった。

To Be Continued

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2016/03/10

八ヶ岳山麓

二人が地階から階段を上がると、不思議なことに立ちはだかっていた壁の一部がスライドして人が入れる状態になった。先に通って来た広い部屋が目の前に広がっていたが、同じところを戻るにしては、天井へと向かう設備が何もない。

「父さん。あの庭の金星の石から表へ出るのだろうか」

「いや、帰りはこの部屋から直接表へ出られる所が壁の中にあると・・」春利は父が壁の方へ向かっていくのを見守った。それは、その建物の入り口と反対側の方角だった。

「あっ!」父の後からついていった春利は、眼前の壁に美術の本か何かで見たことがあるような浮遊する人が描かれていて、周囲には手の平形が薄い赤茶色で不規則にいくつも描かれているのが分かった。

「父さん、来た時には、この壁に絵があるって気づいた?」

「いや。気づかなかったな」

「ここに、いっぱい手の平あるということは」

「うん。この中のどれかが・・」

「じゃあ、父さん」春利は良治は伯父からこのことも教わったのか、それとも直感で探り当てたのかと思いながら、そのうちの一つに手の平を当てた。

「だめか、じゃあ今度は私がやってみる」荘太が左手を手形の一つに合わせたが何の反応もなかった。

「父さん。あの方から、もっと詳しいことを何か聞かなかった?」

「そう言えば・・」荘太は両手を差し出し、30センチほど間隔が離れている眼前の左右の手形に合わせた。

「やった!」

春利の声と同時に眼の前の壁の一部がスライドし始めた。

「父さん、外が見える」

「これは、透明なカベ?」

「二重になっているんだ。これ、こちらからは見えるが向こうからは見えないのかもしれない」

「うん。セキュリティーかも。それで、今度は手形はないな」

「父さん。どこでもいいから適当な所に手の平でタッチしてみて」

荘太がタッチすると、透明な壁の一部がスッと開いた。

「春利の言う通りだ」表に出た二人はすぐに閉じられた壁が周囲と同じグレイであることを確認した。

To Be Continued

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2016/03/05

八ヶ岳山麓

「父さんも何も知らされなかったということは・・」

「春利、これ、見る角度によって何か印があるような気がするが・・」荘太は上下左右に顔を移動させて言った。

「ほんとうだ。何か手の形のマークがあるような気がする。この家は電気設備がされていないから配線とかコンセントやスイッチもないけれど部屋の中が適度に明るいよね」

「そうだな。一般の家庭では使われていない技術が導入されているに違いない」

「ある種のフリーエネルギーだろうか?」

「そうかもしれない。天井か床か壁かに何らかの仕掛けというか特殊なテクノロジーが仕組まれているに違いない」

「ちょっと見では分からないけど。しかし、良治が来たころも同じだったとすると、伯父である渋江真佐雄氏から何らかの形でそれを教わったか伯父さんのすることを見ていたかだな」

「では、やってみよう」荘太が角度によって手形に見える所へ右掌を当てた。

すると、ゆっくりと長方形の引き戸ぐらいの幅が右の方へスライドした。が、そこは更に壁で被われていた。

「父さん、今度は僕がやってみる」春利が左手の形が見えるそこへ左手を当てた。すると、今度は右から左へと目の前の部分が移動して、中の部分が見えてきた。

「春利、見覚えがあるかい?」

そこには人が一人立てるくらいの空間があり、上部の半球形の透明ガラスのようなカバーの下にコイルや複雑なマシンのようなものが確認できた。

「父さん、僕はここへ降りてきた記憶は全然ないけれど、見覚えがあるような気がする」

「ということは、春利は上空から透視したのかもしれないな。あの方が空飛ぶ乗り物からそうしたテクノロジーを使ったに違いない」

「すごいことだね。それで、ここには一人しか入れないけどどうしようか」

「春利、今回はここまでにしておこう。おそらく中へ入ると二重の扉が閉じられるかもしれない。そして、そこに見えるマシンを操作すると、一瞬にして・・」

「金星かどこかの星へ瞬間移動する・・」

To Be Continued

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