2015/09/22

混合種

食事中はいったん話が途切れたが、二人の会話は切れることなく続いた。

「早乙女さん、時間は大丈夫ですか?」食後の緑茶を飲み干した時、春利が改まった表情で言った。

「良かったら僕のところへ寄って行きますか。仕事場を兼ねた自宅ですが」

「わたし、母に買い物を頼まれてきたので、今日はこれから2、3軒寄って行くから、この次に寄らせてもらうわ。沢さんも、今度時間を見て京都に遊びにいらして」

「ありがとう。僕も、瞬間移動でも出来れば良いんだけど」

「そうね。出来るようになるかもしれないわ」ミナはそこまで言って、バッグを手に立ちあがった。

横浜駅周辺にも立ち寄ってみたい店があるというので、春利は西口駅前でミナと別れ、地下街から地下鉄へと続く階段を下りて行った。

市営地下鉄ブルーラインに乗った春利の頭の中は、一つの想いで占領されていた。それは、カナの父親の渋江真佐雄という人は、ある時点で彼らの手が加わっているかもしれないということだった。ひょっとすると、谷川良治もカナも、とそこまで行った時、春利の胸は急に重苦しくなった。早乙女さんだって、否、僕も、僕の父も・・。

まさか・・アブダクション、混合種という言葉をしきりに否定していた。妄想だよ、そんなの。

しかし、人間には見えない空間から彼らは何かをしているのかも、という思いが沸き起こってきた。

「きしねこうえん」というアナウンスがドアの側に座っていた春利の耳に届いた。

しまった、乗り越した・・

To Be Continued

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2015/09/20

混合種

「日本のリサーチャーで、聖母マリアとイナンナを結び付けている人もいますね。縄文の女神は伊那谷生まれのETだと」

「ええ。別名イシュタールね。それと、シャマーシュとかヘリオスとで、ミトラ教に対抗してキリスト教を立ち上げたというのね」

「ミトラ誕生のときの3人のマギがキリスト教では、3人の博士となっていると・・」

「そうね。さまざまな説があって詳しいことは分からないけれど、古代のインド・イランに共通するミスラ神の信仰が、ヘレニズムの文化交流で地中海に入り、形を変えてローマ帝国治下で紀元前1世紀から発展して大きな勢力を持つようになったようね」

「ミトラ教の方が先に誕生して経典も整っていた」

「習合ってことがあるけれど、イシュタールとシャマーシュがキリスト教を立ち上げたとすると、具体的な教義に関与したのか、あるいは人がミトラ教に学んですべてつくりあげたのか、興味のある所だわ」

「確かに。その辺りは謎ですね。いわゆる神と言われるETと人間がどのような関係にあったのか」

「電気工学をやった沢さんもそうしたことに興味があったのね」

「少しだけれど。父が神学部を出たということを知って、いつの間にか調べるようになったんです」

話しているうちに目の前に届いた焼き魚御膳を見て、二人は視線を交わした。

「沢さん・・」両手を合わせた春利を見てミナは口元に微笑を浮かべ、両手を合わせた。

「僕はクリスチャンではないけれど、上海から帰り、父と何度か食事をするうちに身についたんです」

「すばらしいことだわ。信仰があるとかでなくても、生き物や自然の恵みをいただくことに感謝するってことは。私は、スプリームマスター、チンハイに共鳴するところがあるわ」

「あの、ベトナム生れの人道主義者で霊性の指導者と言われる女性ですね」

「沢さん、もしかして私よりもあの方のことを知っている・・」

「そうでもないでしょうが、何か、あの人は、過去を見に行ったり、リモートビューイングが出来るみたいで、それに、生き物を食べることにすごく慎重で、一般にはベジタリアンと片づけてしまうでしょうが、深いものを感じて」

「大雑把に感じられる面もあるけど、今の時代に、あのような生き方が出来ることは、すばらしいわ」

To Be Continued

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2015/09/12

混合種

「話の途中だけど、良ければ場所を変えない?」コーヒーをお替りして話しつづけていたが、ミナが腕時計に目をやって言った。

「僕は構わないけど、今日は時間は大丈夫ですか?」

「ええ。実はネットで調べて来たんだけど、横浜駅の周辺てデパートがいくつもあるけど、デパート内でレストランやっているところで落ち着いたところはないかと思って」

「良いとこを見つけたんですね」

「デパートは午後8時までだけど、レストラン街ローズダイニングは午前11時から午後10時30分まで営業しているのね。さあ、どこでしょう?」

「それは、ちょっと思い浮かばないなあ」

「ヨコハマタカシマヤの8階よ。日本食は好きですか?」

「きらいではないですよ」

「焼き魚はどうかしら。ご膳スタイルで、お造り、茶碗蒸し、ご飯、味噌汁、漬物とかで、画像では石鯛だったわ」

「魚は好きだし、それは夕ご飯には良いですね」

「じゃあ決まりね。金曜のこの時間だったら席も空いていそうね」

喫茶店を出た二人は、夕食には少し早いからと地下街の書店に立ち寄った。

春利とミナがエレベータで高島屋の8階に着いた時には5時を回っていた。奥の広いテーブルには予約が入っているらしく、先に着いた5、6人の客が皆が現れるのを待っているようだった。

ミナが良さそうな位置に視線を走らせた。二人掛けの空席がずらりと並んでいた。ミナが春利に目配せしてお目当ての焼き魚御膳を二つオーダーした。

「先ほどのことだけど、もしかして渋江さんは・・」

「人の出生は分からない面があると思うわ。それに、生後なんらかの形で彼らの手が加わった可能性も否定できないし」

「アメリカで報じられるアブダクションですか?」

「外見は同じように見えても骨格も違っているかもしれないし、遺伝子となるとまったく見えないし」

「確かに。人間も指の数だって違っている場合もあるし、それってどのケースが多いという数の問題ですからね」

「ええ、世界の、太古の神々のレリーフや彫刻、絵画、日本でも縄文土偶の・・」

「縄文の女神とか仮面の女王ですね」

「これまでは見逃されてきたことが、まだまだあると思うわ」

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2015/09/10

混合種

「しかし、カナさんの父上の、渋江さんに会えるものなら、その辺のことを聞いてみたい気がしますね」

「現在どこにいらっしゃるのか。カナさんも分からないみたいね」

「それは、ミナさんのリモートビューイングで分かるんではないですか?」

「私にも、見えないものがあるわ」

「というと・・」

「とくに、ETといわれる方たちのことは、わずかに見えることもあるんだけど、なぜかまったく見えてこないことの方が多いのね」

「それはどうしてなんでしょうか?」

「ええ。おそらくあの方たちの方からはみな見えるけれど、こちらからは、見えないことが多いわ」

「それは、ふだん住んでいる空間が違うせい。それとも種が違うから?」

「分からないけど、彼らに何かブロックされるのかもしれない」

「じゃあ、ブロックが解ければ見える?」

「その辺のことはまだ私には分からないけど」

「でも、渋江さんて、僕らと同じ人間ですよね」

「それもよく分からないわ。カナさんも、一般の人とは違う面があるかもしれないわ」

「えっ、カナさんが違うって。普通の日本人の女性ではないんですか?」

「そうだけれど、違う面がある・・」

「もしかして・・」

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2015/09/09

混合種

「私には、部屋の中に円柱形のような装置や、機械が並んでいてコイルみたいなものもあるけど、具体的にどのようなことをするのかは分からないわ」

「やはり、ミナさんにはそこまで見えるんだね」春利はそこまで言ってミナの口元が微妙に動いたのを見てとった。

「すみません。なれなれしい言い方をして」

「いえ、ミナでいいわ」

「じゃあ、これからは、早乙女さんでなくてミナさんと呼んでも良いですか?」

「ええ、その方が身近に感じるわ」春利も口元に笑いを浮かべた。年上で大学の講師ということで、少し緊張する相手であることは否定できなかったが、気が置けない存在になっていることを実感した。

「それにしても谷川良治は、その部屋に行き、その装置のどれかに入るとかしているうちに、時空転移というか瞬間移動のようなことに巻き込まれ、金星へいったというのだろうか」

「私にも、そのテクノロジーのメカニズムは分からないけれど、そうしたことがあったんだと思うわ」

「信じられないけど、何者かに空飛ぶ乗り物に乗せられたんではないとすると、そうでもない限り、金星にいるということはないわけだから」

「そうね。アブダクションのようにして連れて行かれたんだとすると、私にもそうしたイメージのようなものが見えるし、沢さんが半分夢で半分べつの空間で会った時にも、リョウジさんが、『UFOなんか現れんかった』とは・・」

「うむ。『帰りの道で、急にわからんなった』というのはどういうことかなあ・・」

「その部分は沢さんの夢なのか、その装置でリョウジさんが元の所へ帰ってくるつもりだったのか、私には分からないわ」

「僕の夢と別な空間がクロスしているというか、ほんとうにその装置で帰って来られるのか」

「それは、渋江さんに訊いてみないと分からないから、今はペンディングということに」

「そうですね。当時小3の谷川良治だってどこまで分かっていたのかもわからないことだし」

「ええ」

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2015/09/01

混合種

花金などという造語は使わなくなったろうか。午後2時を回ったその時間サラリーマンは勤務中だろうが、それにしても、車が来なければ歩道ばかりでなく車道にも人がいっぱい歩いている。若者もいれば高齢者もいる。営業まわりの社員だろうか、暑いのに背広姿の青年もいる。半袖の春利は名古屋に勤務していたときを思い出す。

2人の足で5分余り。春利が父と来たことがある喫茶店はすぐ前方に見えた。

二階の奥行きのある喫茶店は、父と来たときと同じように空いていた。2人は窓側の席をとり、とりあえずアイスコーヒーを2つオーダーした。

「それで、谷川良治とカナさんがイトコだというのは・・」

「ええ。メールで数回やり取りしたところ、渋江カナさんのお父さまとタニカワリョウジさんの関係は、渋江さんの2歳年下の妹さんの子供がタニカワリョウジさんだと分かったわ。妹さんは大学を出てすぐ結婚され、リョウジさんが生れたのね。カナさんのお父様は、博士課程とか出て、アメリカの大学にも留学したみたいだから、結婚が遅かったのね」

「そういうことだったのか。それにしても、どうして良治は小3でとつぜん金星に?」

「当時は分からなかったけど、夏休みに、長野県の伯父さんの別荘へ遊びに行ったらしいわ」

「何、長野県のどこ?」

「沢さんのお父様も諏訪でしたね。中央線の信濃境駅から歩いて15分位で、井戸尻遺跡の近くみたいだけど」

「実は僕は父の生家には行ったことがないけど、井戸尻と言ったら、父が井戸尻考古館へ行ってきたと以前言ってたことがある。カナさんのお父さん、渋江さんの別荘に実験室みたいなのがあるのだろうか?」

「ええ。カナさんが言うには、リョウジさんは小学校に上がってから、いくどもそこへ遊びに行ったことがあるっていうの。だから、伯父さんがいなくても一人で駅から歩いて行かれるって」

「ということは、もしかしたら、そのときは伯父さんはその場に居合わせなかった」

「ええ。カナさんのメールでは、その時は、大学の研究室にいたのではないかって。だから渋江さんも、リョウジさんが実験室のある自分の別荘へ行ったとは思わなかったわけね」

「それにしても、小3の良治は、母親にも誰にも知らせないで、勝手に横浜から一人で信濃境の伯父さんの、そこへ行ったというのか」

「その可能性があるわね。夏休みだし、横浜からだったら小3でも一人で電車に乗って行かれないこともないと思うわ」

「何かに引き寄せられるように・・。それにしても、その別荘にはどんな実験装置があったんだろう」入口に姿を現した男女の客の方へちらりと視線を走らせ、春利は小声で言った。

To Be Continued

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