2015/08/30

混合種

春利は横浜西口、ザ・ダイヤモンド地下街へとつながる階段横に位置する石像の側に立っていた。石像の名が、『魁の舞』というのだとネットで調べて初めて知った。

8月に入ったが、ミナは採点で忙しいだろうと春利は連絡を控え、夏季講習に専念していた。春利の小中学生の頃は3学期制だったが、その後2学期制になった事は上海から戻って認識した。春休み、夏休みと冬休みは同様にあるのでほっとした。

ミナから電話が入ったのは8月半ばだった。採点も終わり一段落ついたから横浜へ行くという。以前立ち寄ったとき同様、新幹線で途中下車し、その足で生家の武蔵野の両親のところへ行くのかと思ったが、ミナの大学は夏休みが9月半ば過ぎまであるので春利の都合はどうかと訊いてきた。塾の夏季講習が終わり、生徒の授業が始まるまで月末月初と数日間あるからと応えると、両親のところへ先に行き、それに合わせて行くという。

人通りは多いが、石像の側に立っているのはなぜか春利だけだった。この像、目立たない上に嫌われているのだろうかとふと思う。像は目立たないが、地下街へとつながる階段横の石像といったらここしかないから、と思い、そんなことを考えていた自分がおかしく思えた。だって、彼女にはリモートビューイングの能力があるじゃないか、携帯で連絡取り合わなくても、もしかしたら、何の連絡もしなくても、僕がどこにいるか、あの人には分かるんじゃないか、という思いがわき起こって来て内心で苦笑した。

それにしても、いつから僕の周りに不思議なことが起こり始めたのか。あの地震で来未がいなくなってから。否、名古屋に就職して、あのアパートに住み始めてからか。

「ああ、長いこと待ちました?」人の流れから抜け出し、春利の方へ向かってくる女性の顔から笑顔がこぼれていた。

「いえ。先ほど来たばかりですよ。この場所、すぐ分かりました?」

「ええ、多分こちらの方じゃないかと」

「早乙女さんは道に迷うことなんかないのでは・・」

「そうでもないですよ。でも、心を落ち着ければ見えてくるから。でも、沢さんだってそうじゃないかなあ」

「大きく迷ったことはないけれど、早乙女さんのような能力は僕には備わっていないから」

「分からないですよ。沢さんにもあると思うわ」春利はちょっとおどけた顔をして見せ、喫茶店がある方向を指さした。

「カナさんとは連絡が取れました?」

「ええ。カナさんとタニカワリョウジさんは従兄妹だったわ」

「えっ、イトコだって?」

To Be Continued

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2015/08/22

別な空間

「時空転移という表現がマッチしているかどうか不明だけれど、私には実験室のような部屋が見えるわ」

「実験室? どういうこと・・」

「ええ。たぶん、タニカワさんは、子供のころ。沢さんの話に合わせると、夏休みかもしれないけれど、そうしたところへ行き、そこで」

「早乙女さん。それは、横浜ではない?」

「違うと思う。どこか地方の山の中というか、あまり人気のないところにその建物があって、そこで・・」

「谷川は、夏休みにそこへ行った。その実験室のような所で姿が消えた」

「ええ・・。沢さん。金星であなたと一緒にいたカナさん」

「ここでも、カナさんが関係している?」

「カナさんとタニカワさんは知り合い、というより親せき関係かもしれない」

「何だって? 金星にいる谷川とカナさんが親せき・・」

「私、後でカナさんにメールしてみる。数日前に留学中のフィンランドからメールが入ったから」

「谷川が行方不明になった小学生の頃のことは全然わからないけど、もし親戚だとすると、カナさんは谷川良治がどうなったか知っていた可能性がある」

「ええ。その当時はカナさんはまだ生まれていなかったけど、ある時点で、リョウジさんのことを知った可能性がある。沢さんと別な空間で金星に行った時はどうだったか、それも訊いてみるつもり」

「しかし早乙女さん。小学生のときに行方不明になったままの谷川良治に僕を会わせたいと思ったということは、最近になってかもしれないけど、知っていた可能性が大ですね」

「ええ。また連絡するわ」

To Be Continued

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2015/08/17

別な空間

次に春利が目覚めた時は5時半を回ったところだった。

妙な気持だった。最初の眠りでみた夢のことが鮮明によみがえってきたからだった。いつもだったら忘れてしまうのにどうしてだろう。

午前中の夏季講習のことも気になり、起きてしまおうと思った。少人数の塾だが、小中学部とも業者の教材を注文して使用を始めたが、別途にプリントも作っておこうと始めてみて思ったが手つかずになっていた。

午前中の小学生の講習が終わった時、再び夢のことが気になった。ミナに訊いてみたいとの思いが募った。大学で夏休み前の最後の授業をやっているだろう。夕方になるのが待遠しかった。

午後の中学部には男子が加わり真剣さが増していた。数学が得意な生徒が増えたことで、その分、春利も気合が入った。

授業が終わり、生徒たちを見送ってから少しおいて家を出た。ファストフード店で夕食をすませた。

帰宅して深呼吸を一つ。パソコンを立ち上げ、差支えなかったら連絡欲しいとメールした。

パソコンが唸りだしたのは10時前だった。

「明日からテストに入り、授業はないから大丈夫」画像に遅れてヘッドフォンの耳元でミナの声がした。

夢にあらわれた谷川良治のことを話した。

「で、沢さんは、タニカワさんが夢で言ったことが気になっているわけね」

「そう。夢だから現実とごっちゃにしてはおかしいと思うけど、どうも気になって、早乙女さんなら分かるんじゃないかと思って」

「沢さんの夢の中で言ったという、UFOなんか現れなかったというのはほんとうだと思う」30秒ほど間があってミナの声が耳に届いた。

「じゃあ、谷川は実際どうやって金星へ?」

「それは、時空転移というような・・」

「時空転移?」

「ええ。それも道を歩いていたら突然というようなことではなく・・」

「夢とは違って、帰りの道でそうなったのではなかった・・」

To Be Continued


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2015/08/11

別な空間

春利はパソコン画面の時間表示に目がいった。話を切り上げなくてはと思いつつ言葉が口を突いて出るのを止められなかった。

「早乙女さん。ダヴィンチはもしかして」

「ええ、もう12時を回ってしまったから、続きはまたにしましょう」

ミナが画面で視線を追っていたことに気づき春利は頷く。

スカイプをログアウトした春利の頭の中には新たな疑問が頭を持ち上げ、やがて遠のいていった。明日のために眠らなければと思う。

春利は全身が硬直しているのを感じ、半ば身体をよじった。

「ええ? 空飛ぶ乗り物ではなかったって。じゃあ、どうして」春利は暗闇に向かって質問していた。

「あんときは全然わからなかった。何がなんだか」

「なんだって?」

「わからんかった。気がついたら変なとこにいたんだ」

「どういうことなんだ。なに言ってるのかわからんよ」

「あれわね、UFOなんか現れんかった」

「なんだって。どういうことか分からん」

「道で・・」

「道で?」

「帰りの道で、急にわからんなった」

これって夢だよな・・。

胸のあたりが妙に苦しくなって春利は目覚めた。
夜中の3時を回っていた。

To Be Continued

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2015/08/08

別な空間

「聖母マリアがポルトガル中央部・ファティマに現れたときのことね。私もそう思う。何万という人々がヨーロッパから集まったというから」

「しかし、それにしても不思議な方ですね。ネット上では、ダヴィンチやミケランジェロが表現したマリアは、あるリサーチャーによれば、レプタリアンとか悪魔的な要素をもった存在でもあると・・」

「ええ。聖書に登場する複数のマリアには、悪魔的な要素は書かれていないから。あれは、聖書を書いた人の創作だと私は思う」

「ということは?」

「聖母マリアについては、西方教会・東方教会それぞれ教派ごとに違いがあるし、聖母マリアとマグダラのマリアは、ダヴィンチやミケランジェロの作品上では、同一と言っている人もいるし、聖母マリアが地球生まれであっても、ETであるなら、人間が想像できない不思議な面をいっぱい持っているはずだと思う」

「早乙女さん。彼らETは、人間が思い描く姿になって現れるのではないかと僕は思うけど」

「ええ、どういうメカニズムが働くのか分からないけれど、そうした面があるのではないかと私も思う。私にとっても、謎だらけであることには変わりはないわ」

「その前に、これまで僕らは、聖母マリアやキリストにしても、ダヴィンチやミケランジェロやラファエロなどの作品を通してその姿をイメージしていたけれど、彼らも会ったこともない存在ではないのだろうか」

「一番の謎はダヴィンチね。はたしてダヴィンチは、私たちのような人間なのか」

「というと?」

「ダヴィンチは、キリストやマリアの正体を知っていたのではないかと」

「会ったこともない存在の実体を知っているということは」

「ええ。過去のギリシャ彫刻や絵画やダヴィンチが出遭った誰彼から知り得た」

「早乙女さん。リサーチャーの人がネット上で、ダヴィンチは長頭人間の友達がいたとか、飛行機が発明される500年も前に上空からイタリアのある地域の精緻な地図を描いていると」

「私もそれは観たけど、3Dを使っていた、彼らの助けを借りていたという。それもだけれど、ダヴィンチには人間以上の能力が備わっていた」

「人間以上の・・」

To Be Continued

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2015/08/06

別な空間

春利はふいに名古屋で働いていた頃のことを思い出した。アパートで、マリアがパソコンの画面に現れ、涙を流した。

「マリア」

「ええ」

「あれは、別の空間から、我われの空間へパソコン画面を使って現れた・・」

「そうね。あの方は世界中に現れていると思うわ」

「新横浜公園で、再び空飛ぶ乗り物で現れて、来未について・・」

「そうね。世界中で呼び名は違うけれど、伊那地域で誕生した地球生まれのETということになるわね」

「不思議だな。なぜ僕の所に現れるのか」

「それは、あなたのお父様に関係していると思うわ」

「父が神学をやったということ?」

「それもあるけれど、沢さんからすれば祖母にあたる人が、お父様が小学生のときに亡くなっているわね。その方のお父様への思いがあの方に通じていたのではないかと思うわ」

「僕は一度も会ったことがないけれど、祖母は、信仰を持っていたのだろうか」

「それに、あなたのお父様も心の深いところで・・」

「そのことが、僕のところへも及んでいる」

「あの方が誕生した地とも関係しているかもしれない。伊那谷から八ヶ岳山麓一帯ね」

「それで、あの辺りでは縄文ヴィーナスとか仮面の女神のような土偶が多く出土しているのか」

「そうね。その後にペルシャやバビロニア方面へ行ったけど、彼らの乗り物だったら一瞬で行き来できる距離でもあるし、あの方は今でも世界中飛び回っていると思うわ」

「一番多くの人の前に現れたのは、ファティマの奇跡のときだろうか」

To Be Continued

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2015/08/04

別な空間

「会ったといっても、早乙女さんの場合、直接ではなかったわけだけど」

「そう、別の空間」

「僕にはそうした空間は見えないと思っていたけど・・」

「でも、沢さんは、もしかして夢だと思っていたかもしれないけれど、今回より前に、上海でそうした経験をしていたのではないかと思うけれど」

「そう言われれば・・」春利は上海中山公園で来未や来未の友達のような人が現れた事を思い出し、パソコン画面のミナの表情の変化を見逃すまいと凝視した。

「私たちの地球を取り巻く空間には、幾重にも別の空間が重なっていて、ある時、すっと別の空間へ移動する。ふだんそこへ移動することは人には困難なことだけれど、ある条件がそろった時それが出来ることがある」

「ある条件?」

「それは私にも分からないけれど、何か振動数みたいなものがあって、ある時それが隣りの空間へ移ることが出来る」

「それが日常的に出来る彼らは、その原理を知っている」

「そうね。彼らに訊いても、たぶん、遠回りなヒントを出すかもしれないけれど、直接は教えないと思う」

「早乙女さんもいろいろと体験しているんですね」

「沢さんも自分で気づいていないだけで、実はもっと前から見えていたものがあったでしょう?」

「もっと前から・・。早乙女さんにはそれが分かる」

To Be Continued

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