2015/06/30

別な空間

中2の生徒たちからあの上空の物体についての話が出るかと思ったが、何もなかった。春利から話を切り出すことはよそうと思った。授業にならなくなる恐れもあるし、変だと思われるかもしれない。

翌日は9時に目覚めた。まもなく子供たちの学校が夏休みになる。午前中の授業を希望している子もいるので、出来る範囲で対応しようと布団の中で思う。カーテンの隙間から射し込む陽射しに洗濯物がたまっていることを思い出し急いで起きる。梅雨明けしたんだよな、と思いつつ。

遅い昼食の食器を洗いながら、今日は小学生の授業だけだから、終わってからどこかへ夕食を食べに行こう、と窓の外を見る。洗濯物が風で回っている。陽射しも強いから、と窓を開けさわってみる。すっかり乾いている。ちょっとうれしくなって取り込みにかかる。生徒が来る前にそうしておきたかった。

「先生、私、きのう帰りに公園のところで何か、不思議なもの見ちゃった」入って来るなり生徒の1人が口元を震わせて言った。
髪が長く目が大きくて不思議な輝きを帯びていたあの母親の娘・サイカだった。

「どこの?」

「あそこ。暗くなってたけど、空が明るくなって」サイカは玄関の後ろの方を指さして言った。

「あそう、とにかく入って」後ろからぽっちゃり顔の坂木シノが現れた。

「坂木さんもきのうの夕方、公園の側を通った?」春利は岸根公園の方を指さして言った。

シノは首を横に振った。春利はクーラーをいったん消したことを思い出して点けに急いだ。

昨日上空に現れた不思議な照明弾の様な物体については、新聞でもテレビでも取り上げなかった。
しかし、サイカも見たというからには、ほかにも見ていた人がいたに違いない。春利は背後の道で母親に告げていたサイカとは別の女の子のことを思いだした。中学受験をすると言って来ている塾生にどこまで話したらいいものか。かといって、無視したら、かえって屈折して良くないと春利は思う。

「学校では、そのこと話題になった?」春利は、あと二人が来るまで話を聞こうと思った。

「どういうこと?」

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2015/06/23

別な空間

春利はその間に腕時計に目をやらなかったから、実際どれくらいの時間がたったか曖昧だった。
だが、声のする方へ目をやり、再び上空を見上げた時には、もうその物体は見当たらず、月は雲に隠れ、西の方に金星だけが輝いていた。

春利は立ち上がり、公園の周囲を巡る舗装された道を歩き出していた。

バス通りに出て住まいの方へつづく脇道を歩きながら、
「何もメッセージは聞こえてこなかったな」と内心で呟いていた。

以前新横浜公園の上空に現れたマリアと今回のものとは、まったく関係がないのだろうか。別な種のエイリアンの乗り物なんだろうか。

帰宅したその夜、春利は容易には寝つけなかった。背後の親子も目撃していたことが、錯覚でない証拠だと思った。そばにいたのなら、あの上空に現れた物体について話したかった。

翌朝目覚めたのは10時近かった。明け方まで熟睡できなかったせいだと、目覚めてしばらくして思い出した。11時半頃、朝食と昼を兼ねたような食事をした。ご飯を口に運びながら、自らの中にある既成概念というか、それまでそれが普通だと思っていたことが壊れかけているような、妙な不安に駆られた。

食器を洗い終えると、パソコンを立ち上げた。昨日上空に現れた物体について、何か情報がないかさがした。しかし、昨日のことについてのものは見つからなかった。これまでに、国内だけでなく世界で同様の物体というか光景に出合った人がいないか、動画サイトで検索してみた。

見つかった。ブラジル、ポーランド、ドイツ。春利が見た光景と非常に良く似ているものが映し出された。やっぱり、あのような乗り物で来ているんだ。春利以外に、過去に世界各地で見た人がいた、とほっとした。オレンジ色に光っていた上部の楕円形のものが母船で、それからスペースクラフトが次つぎと出てきた。実際、母船は相当高いところでホバーリングしていたに違いない。巨大なスペースシップなのだろう。

塾用に使っている部屋の掃除をしていると、あっという間に5時を回っていた。中学生が来る前に食事をとっておかないと仕事中空腹で力が入らない。ネットで注文した無洗米を電気炊飯器に1合セットした。汗が出てきたのでクーラーを点け、フライパンに卵を2個割って入れた。生野菜は昨夜最寄りのコンビニで買って来た物がある。やはり味噌汁をつくろう、とつぶやく。

To Be Continued

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2015/06/17

別な空間

春利が座ったのは、赤土がむき出しになっている場所にあるベンチだった。

数メートル離れている春利の隣りのベンチには、今しがたまでツーベースで野球遊びをしていた子供たちが集まっていたが、帰る時間を決めていたらしく、ベンチの荷物を取り上げると、それぞれの自転車にまたがって散って行った。

春利はベンチに腰掛け、遠くの方でキャッチボールをしている中学生らしい二人をぼんやりと眺めていた。
「おい、そろそろ帰ろうぜ!」ボールを外した方が、追いかけながら叫んだ。速いボールだと見逃してしまうほど暗くなっていた。

春利は、背もたれに上半身をゆだねていたが、視線は上空に向かっていた。

と、その時だった。空の一角に何かが現れた。雲が所どころに点在していたが、それが現れた周囲には雲は見当たらなかった。春利はその物体がどのような形をしているのか判断できなかった。相当高い所にあるようだったが、次第にゆっくりと降下してきた。

上部の方がオレンジ色の光を放っていて全体が楕円形の様な形をした物にも見える。春利は最初、照明弾か花火かなあと思ったが、それにしては、高い所にあるし、消えないどころか、より形を鮮明にさせていた。

しかし、次の瞬間、春利はハッと息をのんだ。その物体が向きを変えたのか、大きな楕円形の周囲に窓の様なものが並んでいるのが分かったからだ。そして春利が更に目を見張ったのは、その大きな物体の下から球形に光る物体次つぎと紐のように下へさがって来たと思うと、一番下の物体が光りながらその紐のような部分から左の方へ離れて行った。

その有様は、地上の人間に何かを誇示しているいるようにも思われた。

春利は、視線を公園に戻した。草が一面に生えている広大なエリアの周りには背の高い常緑樹が取り囲むように茂っていたが、人の姿が見当たらなかった。

「おかあさん、あれ、何?」春利が掛けているベンチの後ろの方で声がした。振り返ってみると、後方の通りの方に親子連れがいて女の子が上空を指さしていた。

「あっ、ほんとうだ、何だろうね」

親子の会話はそこで途切れ、家路を急ぐ母の声がしばらくしてから聞こえた。

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2015/06/10

別な空間

喫茶店を後にした二人は、今度は横浜駅の東口へ向かった。日曜のその時間は西口より東口の方が空いているかもしれないとの荘太の意見に従った。

地下街へと階段を下りていき、数件当たると中華料理店の前に立っていた店員が、「お二人ですね。大丈夫ですよ」と誘いの言葉を投げかけてきた。歩き回るのも大変だから、と、父に合わせて中へ入った。

ちょっと早い夕食をすませた二人はJRの改札前で別れた。

春利はふたたび西口へ戻り、あざみ野と湘南台を結ぶ市営地下鉄ブルーラインに乗った。下車駅を一駅やり過ごして、岸根公園駅で下車した。少し歩いて帰りたかった。春利の足で寄り道しなければ徒歩で30分余りで住まいに着く。小学校の低学年の頃、母ともいくどか来たことのある公園だった。

上海から戻り、現在の公団の分譲に塾を兼ねて住むようになり、塾の仕事がない日は散歩がてら立ち寄ることがある憩いの場でもあった。その広い公園は、1940年に防災緑地を兼ねた場所として整備が始まったが、戦時中は軍の基地で、戦後は米軍に接収され、1970年代になってようやく接収解除にともなって整備されたということを聞いたのは、数か月前のことだった。

犬の散歩で来ていたお年寄りと偶然中央広場のベンチで隣り合わせたのだ。杖をつきながら、ゆっくりゆっくりやって来た。犬は老人の足下に座って尻尾をふっていた。

「わしも天涯孤独でね。この齢になると、近所に知った人もなくてね。この犬と暮らしていて、週に二度ヘルパーさんが来てくれるんだ」

あ、そうですか、と春利が相槌を打っていると、いつの間にか公園のことに話が及んだのだった。

話しが一段落すると、老人は杖をついてゆっくりと立ち上がり、「では、もう少し犬の散歩をして」と、春利とは反対方向へ歩いて行った。

春利は、一面に草の生えた「ひょうたん原っぱ」と呼ばれている広い平地を歩いていた。周囲には常緑樹の古木や背の低い木々も生い茂っていた。ところどころにベンチが並べられていて、犬の散歩で疲れた人が休んでいた。

家族連れでやって来て、キャッチボールやバトミントン、サッカーボールを蹴っている子供たちも、辺りが暗くなってきたことで帰り支度を始めている。

春利は、藪蚊が少なそうなベンチをめがけて歩いて行った。まだ帰りたくなかった。避けて通れない、何かが起こりそうな予感がした。

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2015/06/07

別な空間

「僕には言わない部分で、見えている部分があるのかもしれない」

「しかし、人間みな同じ生きものだって漠然と思っていたけど、それは思い込みかもしれないね」

「と言うと」

「うん、今までは私も地球に、別の星から来た生きものというか人間と同じような姿かたちをした知的生命体が生きている何て事は考えなかったが、それは違っているのかもしれない」

「具体的にはどんな?」

「うん、たとえば、金星から来た人。北欧人の先祖にあたるとか。アメリカでは、そうした人がテレビ出演しているんだね。その女性が言うには、地球人と彼らは少し違っているとこがあるけれど、おおよそ似ている。しかし、彼らが地球に来るとよけいな苦労が増えるのではないかな。地球に来たら地球人と同じようにものを食べたり、食べ物を手に入れるために何らかの方法で働かなければならない」

「その人のこと、僕も観たことあるよ。シルバーヘアで、言っていることは、信じられないけれど、ほんとうじゃないかと思った。地球へ来る前に月で体を慣らし、何か、ヒマラヤの方の寺院で地球の言葉も習ったのかな」

「聞き間違いでなければ、250歳を超えていたね。聖書に書かれていることがほんとうだった」

「父さんは聖書のことを勉強したんだよね」

「春利よりは少しだけ知っているかもしれないが、大したことないよ。ただ、旧約の創世記には、ノアは950歳まで、レメク777歳、メトセラ 969歳、エノク 365歳・・アダム930歳。あれってカウントの仕方が違っていたか何かだと思っていたが」

「ああ、アメリカ政府を助けている、トールホワイトって呼ばれている種も、800歳まで生きるとか」

「おお、春利もそこまで知っていたか。それでね。旧約のあそこには真実が隠されているって思えるようになってきた。同時に、ノアとか、彼らは、我われ人間とは違う種ではないかとね」

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2015/06/03

別な空間

「それは、僕だって、別の空間がこの空間に重なっていて、それぞれの空間にはそれぞれ知的生命体がいるとか、土星の輪の中に、地球の直径よりはるかに大きな宇宙船みたいなのが観測されたとかっていう動画を観ると、妙な気持ちになるよ」

「私の場合は、今まで神と言われてきた存在が、実はエイリアンだったとか、人間は彼らによって最初は爬虫類と彼らとの遺伝子によって創られたとかって聞くと、そのエイリアンを創った神はこの宇宙にいるのだろうか、とか、金星から来た人が、地球に来るのにはUFOのような乗り物で来る人と、亡くなった地球人の身体というか霊体に入り込んで再生するとかっていうような話を聞くと、何とも不思議な気持ちになるね」

「父さんも、いろんなことを見聞きしているんだね」

「人はみな、さまざまなことを感じたり悩んだりしていると思うけど、考えると自分自身が分からなくなってくるね」

「うん、僕もだね。数年前までは、宇宙のことはそれほど考えたことがなかったけど、来未が居なくなってから、僕の身の回りにも不思議なことが多くなってきて、自然と上空に目が行くようになってきたし・・」

「確かに、人は家族とか親しい人などの死を経験すると、地上にいる間は、長いようでほんとうに短いんだなあって思うね」

「人が生きているって、不思議というか、奇跡というか。ある人は早く亡くなり、ある人は生きている。これってどういうことなんだろう」

「そうだね。私も分からないよ。それに対して、どのような解答をされても、完全には納得できないし、別の空間とか見えない部分が多いからね」

「確かに。宇宙だって、人間にはほんの少ししか見えないし、別の空間なんていったら、すぐ壁にぶつかってしまう」

「春利の友達の、早乙女さんとかって、別の空間が見えたりするのかな」

「僕も、あの人ではないから、分からないけれど、リモートビューインっていうか、見える部分があるんじゃないのかな」

「太陽系の星々の、人間以外の知的生命体も見えるんだろうか?」

「具体的には聞いたことないけれど、彼らに遭遇しても、よく言われるように、死ぬほど怯えるっていうことはないかもしれない」

「ということは、分かっている部分がある・・」

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