2014/04/26

メッセージ

送っておいた「承認申請」に父は「承認」ボタンを押しているから、向こうから先にかけたに違いない、と呼び出しながら春利は気づく。

しばらくコールしたが出ないのは、パソコンを点けたままほかのことをしているのかな、と思っていると、つながったサインに変わった。

「もしもし・・春利です」

「ああ、春利。ヘッドフォンをつけるのに時間がかかってね」

父の顔が春利のパソコンに大きく映しだされた。春利の顔も映っているのが確認できる。

「設定に手間取ったかい?」

「そうでもなかった。探す気になれば上海でも日本のものが売られているし」

「あそう。それは便利だね。それで、仕事の方は順調にいっているの?」

「まあ。去年の2月から名古屋から上海にやって来たけど。それで、父さんの方は、地震の影響はなかったの?」

「ああ。あれからアパートにもいたけど、その後、川崎のこの公団の分譲に来てずっとここにいるから。60で勤めは辞めて、今はわずかの年金と、ネット上で少しだけ稼いで、それで何とかやっているよ。だから、地震の影響はほとんど受けずにすんだよ。春利の方は?」

「僕も、地震の時は上海だったから」

「それじゃあ、お互いに無事でよかったね」

春利は来未のことにはふれなかった。桑田も、春利が幼いときに連れて行ったスタジアムから帰ったことは言わなかった。二人は、またメールやスカイプで連絡を取り合おうと言ってスカイプを切った。

春利には、父と別れた5歳までの記憶はとても曖昧だったが、それから25年たったわけだが、大きな違和感もなく父と連絡が取れ、互いに顔を観ながら話すようになったたことが不思議でもあった。明日からまた仕事が始まる。

To Be Continued

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2014/04/25

メッセージ

公園で、サオトメミナさんから来未さんのことで、という知らせがあったと春利が答えると、それきり返事は来なくなった。

春利はふたたびソファに戻った。いったん閉じたノートパソコンが目の前にあった。不思議なことは、就職が決まり名古屋の会社に勤務し始めたころもあったと春利は思う。目に見えない何かが働いているんだ。3.11の後、上海中山公園の桜の林で、来未ともう一人の女性が現れた。1年余りたった今回も。

夢の中にしても、現実のことが現れて、はっきりと僕の心に働きかけてきた。そして、先ほどの伝えてきた主は、エイリアンだと言っていた。上空には何も見えなかったけど、防御スクリーンで乗り物を隠していたに違いない。

幻聴や幻視ではない。エイリアンは、来未のことを知っている。そして、サオトメミナさんという人は来未となんらかのコミュニケーションをとって知らせてきた。エイリアンは、来未のこともサオトメミナさんのことも知っている。あれは、テレパシー・・。いったい、どんなエイリアンなのだろう。エイリアンがずっと昔から地球に来ているということは、春利もネット上で見聞きしていた。

どのエイリアンの種なのだろうか。夕食の米をとぎ、レバーを入れた野菜炒めをつくりながら春利は考えた。グレイにも3種類いると、実際見たことがあるという元アメリカ軍関係者が言っていたし、アメリカ政府に協力しているトール・ホワイトいう北欧人に似たエイリアンがいるということも浮かんできた。実際エイリアンのどれくらいの種が人間と関わっているのだろうか。57種類の異星人が目録に載っていると言っているビデオもネット上で観たことがあったが、春利はいずれのエイリアンとも出会ったことはなかった。もっとも、彼らが目の前に姿を現したら怖ろしさでとても正常ではいられないのではないかと思う。

野菜炒めが出来たので、味噌汁をつくろうと思った。日本に帰ったときに買ってきた信州味噌のパックがあと一つ残っていた。上海中山公園周辺の大型スーパーマーケットでは春利好みの日本味噌は売っていなかった。どうしてもとなれば、注文したり、ネットでチェックすれば手に入るだろうが手間がかかる。もう少ししたら何とかしようと思う。やはり、米と味噌は3食に1度は食べたいと思う。

テレビで日本のニュースを観ながら食事をすませた。震災から1年過ぎ、福島を中心にした放射能汚染の関連が多くなった。来未は汚染されている海の底にいるのだろうか。

時計を見た。日本は1時間進んでいるからと、片づけをすませると、テレビを消してパソコンの電源を入れた。

こちらの時間で6時過ぎたから、そろそろ帰ったかもしれない。父のスカイプ名をクリックした。呼び出し音がヘッドフォンの耳元で鳴っている。 

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2014/04/22

メッセージ

桑田荘太は数時間おきにパソコンのスカイプ画面をチェックしていた。

65歳になり生きる楽しみは薄れても、与えられた命を最後までまっとうしようと思った。微かな信仰かもしれないが、高校生のときに初めてであったキリストを通じての祈りが彼を支えていた。

だが、ここへ来て、桑田には新たな希望が開けていた。インターネットを通じて、5歳のときに別れた息子を捜すことが出来た。メールを送った時は、相手が仮に息子の春利だったとしても、自分を捨てた父親なんて親でもなんでもないと相手にしてもらえないかもしれないと思った。

しかし、息子は受け入れてくれたようだ。メールを交換し、互いの写真を送りあうことも出来た。そして上手くいけば、上海にいる春利とスカイプで互いの顔を見ながら話すことが出来る。これは神の導きだったのかもしれない。メールでの添付ファイル画像で現在の春利の顔や会社ビル、上海の風景の一部を知ることが出来た。

5月に入り、一部の種類の桜を残しては大方散ってしまったが、それに比べたら白い大きなコブシの花が咲き、つづいてハナミズキの街路樹が白やピンクの花を咲かせている。

陽射しが部屋を明るくした時、桑田は、25年前に春利を連れて行ったスタジアム周辺に行ってみようと思った。日曜だから人出が多いかもしれないが、にぎやかなのも良いと思った。午後3時を回ったところだったが、日照時間もだいぶ伸び、6時過ぎても明るから、と。

帰ってきたころ、春利のスカイプもつながっているかもしれない。

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2014/04/20

メッセージ

春利は、上海中山公園の長寧路1018号にある巨大ショッピングセンター「龍之夢購物中心」(ロンジーモンゴウウージョンシン)にいた。日曜日とあって、午前中からすごい人出だった。中国語に交じって日本語も聞こえる。スーパー、家電、物販など、日本の洋服店も入っていて、見て歩くだけでも楽しくなったが、春利の目的は、ヘッドフォンだった。

良さそうな物がなかったので、別の家電量販店「永楽電器」、「国美電器」と回ってみた。

ヘッドフォンを買い、 CoCo壱番屋で久しぶりにカレーを食べて、午後2時頃公寓の15階に戻った。

さっそくパソコンに差し込んでテストしてみた。父からのメールで、スカイプ同士で話せば電話料金もかからないし、互いの姿を観ながら話しが出来るからとメールが入ったからだった。パソコン用のカメラはあるからスカイプをダウンロードしてヘッドフォンを買ってくれば出来るだろうと思った。中国語の案内は特に問題なく理解でき、ダウンロードが出来た。

日本語に変わった画面に父のスカイプ名を入力したがオフだった。どこかへ外出しているのかもしれない。日本とのタイムラグは一時間遅れだが、もう少したってからやってみることにした。

夕食の準備にはまだ早いし、と思っている時だった。

「ミナさんから知らせが届いた?」

「えっ?」部屋の中を見回したが誰もいない。それは春利の頭に直接伝わってきたのだが、初めてのことで、頭がおかしくなったのかと不安が背筋を駆け抜けた。幻聴?

「窓の外の上空から」ふたたび春利の頭にはっきりと伝わってきた。

ソファに掛けたままで窓の外を見たが、陽射しに光る別の高層住宅の窓が並んでいるのが見えるだけだった。春利は立ち上がって窓際へ行った。

「見えないけれど、上空に誰かいるのですか?」

「サオトメミナさんから来未さんのことで、何かメッセージが届いたか?」

「あなたはだれ?」

「地球人が、エイリアンとか言っている者」

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2014/04/17

メッセージ

春利は、転勤先の上海浦東新区福山路にあるビルの9階にいた。

宮里上海支店長と次に営業に出向く会社についての打ち合わせだった。訪問先の有限公司は、建築・建材を扱う会社で、工業用シール剤・接着剤の新商品の紹介が春利の仕事だった。

隣りには張虹(チャン ホン)も同席していた。春利も上海へ来て1年2カ月たち、主任営業技術員の肩書だったが、商談で相手の中国人担当者の意向が十分くみ取れない部分もあるため、重要な場には張虹(チャン ホン)に同行して貰った。

昼食の時間でいったん休憩に入り、張虹(チャン ホン)はお弁当を持参してきたというので、春利は職場ビルから表に出ようとエレベーターに乗った。

「沢さん。私は、サオトメ ミナ、と言います。来未さんから、あなたのことを聞きました。あなたに会えないまま、地震の後の津波で向こうの世界へ行ってしまったため、私にその思いを伝えてきたのです。一度あなたに会ってお話ししたいと思っています・・」

ふいに、上海中山公園でのことが春利の脳裏によみがえった。あの公園で、桜の木の下の草むらに腰を下ろし、仰向けに寝転がって急に出張の疲れが出たのか、しばらく眠っていたのだ。

しかし、サオトメ ミナ、という名はまったく初めてで、その人が来未の名を出してきたということは、ほんとうに、実在している人なんだろうか。それにしても、不思議だな・・

春利は、急に後ろから押されて我に返った。エレベーターは一階に着いてドアは開いていた。

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2014/04/14

ミナ 京都の部屋

あの人に伝わったかな。

精神を統一して彼に思いを送ってみよう。5月の連休に入って3日目の朝、ミナの中にそうした思いが浮かんできた。あの日、最後に来未があの人の名前と居場所を伝えて消えていったが、ミナはしっかりと記憶していた。

朝から数時間自宅のマンションのソファに掛けていたミナは、コーヒーを淹れに立ち上がった。非常勤講師とは言え、持ち駒数の多い大学の授業の準備はいつも忙しかったが、上賀茂神社でのことがずっと気になっていた。

「わたしたちは、もう次の空間へ移動する時が来ていると、あの人たちに告げられました。それで、わたしの代わりにあの人に会い、わたしのつづきをしてもらえないかと、お願いしようと思ったのです」あの日、来未から伝わってきた思いがいくどとなくミナの中で繰り返された。

そんなことってあるんだ。ある日突然天から降ってきたように。体外離脱をしてから、次々と不思議なことが起こるようになった。しかし、それも、最初から決まっていたことなのだろうか。巨大地震が起きて津波が来て、ほんとうに、どういうことなのかな、人の一生って。

憲法記念日、みどりの日、こどもの日、日曜日、とミナは開いたメモ帳で確認した。何の休日なのか曖昧だった。

私の送ったメッセージが、上海にいるハルトシさんに伝わっていれば良いけれど。ミナは、口に入れたコーヒーを静かに飲み下した。

2階の窓の向こうには、ハナミズキの白い花が陽射しを受けて咲き誇っている。

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2014/04/14

メッセージ

土曜の朝、春利は半年ぶりで上海中山公園へ向かった。名古屋支店にいたころは、5月の初めは連休だったが、上海へ来て年ごと変わり、その年は4月29日から5月1日が労働節で休みだった。

日本だと5月5日は「こどもの日」で休みだが、土曜日だから上海でも休みだった。前日までは深圳に二泊の出張で、夕方飛行機で上海へ戻った。日本のテレビニュースを観ると、漁船衝突事件があってから尖閣周辺海域問題で反日感情が高まっているような報道だが、春利の会社の現地での営業ではさほど影響がなかった。

疲れもあったが、会社が休みだと朝早く目覚めた。パソコンをチェックしながら、パンと牛乳、それに野菜で朝食を済ませた。父からのメールは入っていなかった。父が先に写真画像を送ってくれたので、春利は、上海の会社ビルや現在借りている公寓の写真を数枚くわえて添付メールで送った。父の髪の毛はすっかり白髪だったが、春利はどこかしら父に似ている自分を感じた。

何かに引かれるように家を出て歩いていた春利は、上海中山公園の入口に着いた。中からラジオ体操のような音楽が聞こえる。

特に決めてきたわけではないが、「櫻花亭」の看板があるところを歩いていた。朝早くから来る高齢者は多いが、桜の花がほとんど散ってしまった林の中には誰もいなかった。

春利は、花びらが積もっている林の草むらに入っていった。暑くも寒くもなかった。中ほどまで行くと、春利はそっと腰を下ろした。張虹(チャン ホン)も同行して出張した深圳の訪問先の会社が浮かんできた。

「沢さん。私は、サオトメ ミナ、と言います。来未さんから、あなたのことを聞きました。あなたに会えないまま、地震の後の津波で向こうの世界へ行ってしまったため、私にその思いを伝えてきたのです。一度あなたに会ってお話ししたいと思っています・・」

「えっ?・・」春利は半身を起こし、林の中を歩いている若い男女の方を見た。大声で何か冗談を言って笑っているようだ。

違ったか。今のは夢? サオトメ ミナ。来未さんからあなたのことを聞いた、と。

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2014/04/07

武蔵野桜まつり

上空を見上げたが青空だけが広がっていた。どこからともなく届いた言葉を疑う気持ちがわいてきたが、ミナはそのままゆっくり歩いた。

斎王桜の真横にさしかかり、視線を道の続く方へ戻してすぐだった。

ミナの眼前に突然光の窓のようなものが現れドキリとした。が、ミナの足はそこへと踏み込んだ。

下方に見える屋根は神社。広い緑は隣りのゴルフ場・・私は上賀茂神社の鳥居をくぐり・・と、ミナは側に何か気配を感じた。

「あの二人、来未さんと春海さん」

「そうです。上賀茂神社にミナさんが来るという知らせがあったのです」

「知らせが・・」

「わたしたちは、あの地震の後の津波でこの世界へやって来たということが分かりました。それを教えてくれたのが、あの人たちです」

「あの人たち?」

「ええ。あの人たちは、こことわたしたちがここへ来る前に住んでいたという世界を自由に行き来ができるのです」
二人の思いが一つになってミナに届いた。

「わたしたちは、もう次の空間へ移動する時が来ていると、あの人たちに告げられました。それで、わたしの代わりにあの人に会い、わたしのつづきをしてもらえないかと、お願いしようと思ったのです」今度は、来未がそう言い、となりの春海が見守っていた。

「あの人・・」

「あの人とは、わたしたちがこちらへ来る前に、来未がお付き合いしていた彼のことです」春海が来未の思いを伝えてきた。

「その人のことは、自由に世界を行き来ができるあの人たちが伝えてくれます・・・」

To Be Continued

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