2012/11/18

初めての上海

その朝春利は変わった地点に立っていた。

春利のいる向こうは海だった。ちらりと振り返ると、後方にも海水が確認できた。春利が立っている辺りは長細い楕円の陸地で、足元に海水はなかった。

どうしてここに、と思いつつ春利はどこまでもつづく彼方の海へ目を向けた。沖の海面は荒れているようだった。

夢か、目覚めてそうつぶやいたが、なんとも荒涼とした見知らぬ所にぽつんと一人で立ち尽くしていたことが不思議に思えた。

置き時計に目をやった。6時半を回ったところだった。寝過ごしていなかったことでほっとした。基本的な勤務時間は午前9時から午後6時だった。

3月7日 月曜日。ベッドからカレンダーを眺めた。日本でもらった航空会社のもので、偶然にも外灘からプードンの東方明珠塔辺りのフォトだった。

春利は、来未の誕生日が3月12日だったことを思い出した。春利より2つ下で27歳になる。今からプレゼントを用意しても間に合わないが、遅れてごめんと言って届けることはできる。

洗面所でひげをそりながら、春利は時間のたつのを忘れていたことを思う。
上海の公司(会社)と宮里支店長と現地の中国人社員に慣れること、中国語を覚えること、地下鉄に、飲食店に、人民幣(じんみんへい)にと、みな初めての経験だった。


To Be Continued

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