2012/05/13

日産スタジアム

桑田は猫に餌をやる男と別れ、鳥山川に目をやりながら西ゲート橋の方に向かってゆっくり歩きだした。自転車をこぎながらリードの先に芝犬を走らせている男がやってきたのでいったん立ち止まった。

西ゲート橋の入口までやってきた。橋の中央には等間隔でポールが立っている。何本あるのか数えてみた。9本だった。

橋の先には日産スタジアムの巨大な円形が浮かび上がっている。日産スタジアムの外周路をウォーキングしようか迷った。空腹を覚えたからだった。

1年中休まずやっている店があることを思い出した。とにかく食べないと歩くのもしんどかった。
桑田は石段を降り始め、右手の公園内にトイレがあることに気づいた。トイレによっておけば、落ち着いて食べられる。店内のトイレに入ったこともあるが、すませていく方が落ち着くと思った。

夏場に出ている噴水は止まっていた。ふだんは芝生の中に並んでいるベンチが埋まっていることが多かったが、さすがにその日はホームレスもいなかった。


ニット帽の男は石段を降りると西ゲート橋につながる路を歩き始めた。普通乗用車がすれ違うことが出来るほどの広さがあった。

若い女性が犬と走りながら男を追い抜いて行った。

やはり名古屋に帰ろうと思った。さみしかったが、自らに与えられた道のように思えた。時間をかけてさがせば良いと漠然と思った。あの人は、誰かと住んでいるのだろうかと想像することもあったが、そのときはそのときさと自らに言ったが、さみしくないと言えば嘘になった。


To Be Continued

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2012/05/03

日産スタジアム

手をつないでいるのは誰だろうか。

見上げた時、手は離れ数メートル先に一人の男が立っていた。
初めて見る人のようでもあり、親せきの人のようにも会社の上司のようにも思われた。

「どうしたんだ?」相手の男が目で言っている。

「大丈夫だよ」応えつつ、心で死んでなんかいないよ、と訴えている。

「もう、遠くへ行かないで」

「ああ、ずっとそばにいるよ。悪かったな」

「人が多いから、しっかり手をつないで離れるんじゃないぞ」

確かにそう言ったのに、男の姿が見えない。

「人生とは、そんなものさ」見知らぬ男がそう言って側を通り過ぎた。
「そうよね、そんなもんかもね」女が男と手をつないで去っていく。

どうしてなんだ・・

下の方から底冷えが上がって来るのを感じた。目覚めた時、風が頬をこすっていた。
「いけねえ、こんなところで長居をしたら風邪をひいてしまう」

陽は雲間に隠れたようだった。

途中で外してバッグにしまったマフラーを取り出して首に巻き、ニット帽を深くかぶり直すと男は石段から立ち上がった。
夜中の12時前には名古屋に戻るべきか迷った。


To Be Continued

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