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2020/01/11

地球人

「ほんとうに、いつも突然だね。予期していたとはいえ・・。もう、一週間になるね」

「春利さん、あのメモをいつも忍ばせていたんですね」

「異変が起きた時、メモを落としていくとは言っていたが、瞬時のことだったと思うが、よく間に合ったというか・・」

「それにしても、誰なんでしょね? 残された者が、誰も気づかないように連れ去ることが出来る存在って」
梨花が宙に目をやる表情で呟いた。

「私にも分からない。地球内か地球外の存在かも、ほんとうは分からない。ただ救いなのは、生徒のみんながそれなりに受け止めているみたいで、春利やミナさんが居なくなっても、この塾をやめないで来てくれていることだね」

「ほんとうに。塾長のお父様がいらっしゃることも大きいと思いますけど」

「こんな爺さんでも、居ないよりいた方が良いのなら助かるが、いなくなった二人が無事に戻って来てくれるまでは、この塾をつぶしたくないからね」

「もちろんです。生徒たちも、荘太先生の教え方は分かりやすいって言ってますから」

「ほんとうに? 私は、自らの経験から、分からない生徒の方に目が行くね。どの科目でも、すぐ分かってしまうような才能には恵まれなかったから・・。それにしても、春利は、連れ去られる前に、後輩の先生の手配もして行ってくれたから良かった」

「ほんとうに。あの大学院生の方は、子供たちに愛情を持っていることが、ありのまま感じられるわ」

「そうだね。心理学の博士課程だと聞いているが、理数の才能にも恵まれているようだね。よく春利の塾に来てくれたね」

「春利さんの人徳じゃないかしら」

「お世辞でも、親としてはうれしいね」

「先生!」ドアが開き、中学1年生が次々と入って来た。

「塾長は、銀河鉄道に乗って未来を旅してる・・」
後ろの生徒の声が聞こえる。

To Be Continued

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2019/12/15

現在・過去・未来

春利は、表情が変わらない人を見ていた。それが春利の安心感を支えていた。
良治の伯父で、側の若い女性の父親。この人が科学者の渋江真佐男。

あの八ヶ岳山麓の時空装置の別荘・・。
一般人ではないが、人間であることに強い信頼感が春利の内に芽生えていた。

沈黙がつづいた。

「私にも分からないわ」春利の疑問にミナが応えた。

声に出さなくても、相手に意思が伝わっていた。

「この宇宙船はどこに向かっているの?」
カナが小声で父に言った。

「分からないが、我われの天の川銀河を航行していることは確かだろう」
博士も小声で応じた。

「ソノトオリデス。マサオワ、ニホンジンノナカデワ、イチバンウチュウノコトヲシッテイル」

ふたたび、トップの意思が皆に伝わってきた。

僕らの太陽系の外を航行しているの?

「モチロン。ニンゲンノセイザヒョウト、ワタシタチガミテイルソレトワチガッテイル」

「どういうことですか?」
カナが再び声に出して言った。

「ニンゲンワ、ソンザイシテイルモノヲミテイナイシ、ジツザイシテイナイモノヲミテイル」

「人間は、正確に物が見えていない?」
谷川良治がつぶやいた。

「ソノトオリ」

To Be Continued

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2019/11/09

現在・過去・未来

「みなさんに伝えたいことがあって、こちらへ案内した」

春利が見覚えのある人の姿を見つめていた時、突然脳内にメッセージが伝わってきた。宇宙服を着た存在とは違い、どこか人間に似た感じがした。

「わたしは、方針を転換した」

「どういうこと?」
連れてこられた5人のうちの4人が発した問いだった。

「これまでわたしは、われわれと人間たちとの橋渡しをあなたたちに望んでいたが、それは必要ないと、人間を見ていて思った」

「橋渡しは必要ない」
春利とミナがそれを同時に反芻した。

「そうではなく、これから変化していく人間のことを、人間の手で伝え、未来に残していくために、わたしはあなたたちをここへ招いた」

「それだったら、もっと適した地球人がいっぱいいるのでは・・」
そう思いながら、春利は見覚えのある男と眼を合わせた。その時、相手が同級生の谷川良治だと確信した。
直後に春利は、先ほどまでいた宇宙服を着た存在が消えていることに改めて気づいた。

「地球上には、ほかにもこのことを伝えている人間がいる。あなたがたの国では、ここにいる5人を選んだ」

この意思を伝えてきている存在に、僕はこれまでに会っているだろうか。・・

「私たちは、これから変化していく未来のことを、ほかの日本人に伝えるために選ばれた」

春利はミナの隣に座っている若い女性の思いが伝わってきたことに驚いた。

ミナが彼女と目線を合わせ、今度は春利の方へ目くばせした。

「そのとおり」

全員に見えない相手の意思が伝わった。

5人からは見えないが、意思を伝えてきている存在からは、見えているに違いない、と春利は思った。

若い女性が、年配の学者風の男と合図している様子を見て、春利はミナ以外の3人が誰なのかを認識した。

To Be Continued

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2019/10/03

現在・過去・未来

そうだ、あの時、僕は何かの働きかけを感じて窓を開けたんだ。

春利は、眼下の空間で小型のスペースクラフトの方に吸い寄せられている情景を眺めながら思い出した。

夢ではなく現実なんだ。

「マモナク、キミノナカマガココヘヤッテクル」

「皆を乗せたあの物体が、この宇宙船に取り込まれるの?」

「ソウダ」

その返事を聞いた次の瞬間、春利のいるルームに宇宙服を着た4人が現れた。

この瞬時のテクノロジーはどういうことなんだ?

「コノルームデワ、ニンゲンワソノスーツヲキナイデイルコトガデキル」

春利の疑問には応えることなく、宇宙服を着た存在から春利にもメッセージが届いた。

4人は、自動的とも思える状態で、宇宙服から地球上にいる姿を現した。

「沢さん!」春利も同時にミナの名を呼んだ。宇宙服を着たままの存在が、椅子に掛けるよう合図した。

「デワ、ゼンインソロッタトコロデ、ドウシテキミタチガココヘマネカレタノカヲ、ワレワレノトップガセツメイスル。キミタチワ、ソノママノジョウタイデソコニカケテイレバ、ワレワレノトップノイシガ、キミタチニツタエラレル」

春利は、ミナと顔を見合わせ、他の3人の顔を眼で追った。

To Be Continued

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2019/09/29

現在・過去・未来

「早乙女さんのほかには誰か?」

「ミナ、キミガシッテイルニンゲンダト、キイテイル」

「ぼくが知っている人たち・・」

「サア、モウ、ホシノジョウクウダ」

「ぼくは、このまま座っていればいいの?」

「ソウダ」

少し離れた所で計器に向かって座っている別の存在が、窓の下を見て仲間に合図したようだった。

春利の眼にも、赤茶色の大地のような景色が見えてきた。

「もしかして・・」

「ソウダ、キミタチガ、カセイ、トヨンデイルホシダ」

「早乙女さんたちは、地面で待っているの?」

「キミモシッテイルダロウ。チカノヒトツカラデテクル」

春利は窓の下を見つめた。大地にある小さな人工的な穴にも見える入口辺りに、生き物のような小さな姿が4つほど並んで見上げているようだ。

あの中に、早乙女さんがいるのだろうか。

春利はその時に初めて気づいたが、別の小型の物体が、巨大な宇宙船と彼らの間に浮かんでいた。

次の瞬間、4つの姿が浮き上がり、小型の物体の方に吸い寄せられるように移動していた。

春利の脳裏に、春期講習からバトンタッチして手伝ってくれることになった大学院生と面接した夜の記憶がよみがえって来た。

To Be Continued

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