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2018/09/24

宇宙政府

電話は梨花からだった。

梨花は春利の塾の教師に加わったが、慣れるまで週一度の数学とイレギュラーの土日補講担当ということで、春利と顔を合わせるのは実質週一だった。

「それで、これから夕食をどうしようかと思っていたところだけど、梨花さんは?」
梨花はちょっと話したいことがあると言ってきたので、都合を訊いてみた。

春利は出来れば出かけたくなかった。長いこと授業から離れていたので、テキストの予習をしないと不安だった。急な変化に適応できていないことは身体で感じていたし、ふたたび眩暈が起きたら困るとも思う。

そのことにふれると、梨花は春利の塾へ行くという。

「沢さんの好きなお弁当か何か買っていこうか?」

「梨花さん、ピザは嫌い?」

「ピザならなんでもOKだわ」

「じゃあ、野菜の多いのやなにやら、こちらで良さそうなの頼んでおくから、買ってこなくて大丈夫。飲み物で自分の好きなのを買って来てもらえば。これから家を出るのなら、こちらに着くころには間に合っているかも」

電話を切ってから、頭はだいぶ地球環境に戻ったかも、と春利は思う。

「わたし、見るようになったんです」
ピザ店が春利の家から比較的近いこともあり、土曜なのに梨花が着く前にバイク音がしてピザが届いた。梨花が買ってきたパック入りの牛乳と緑茶をカップで温め、あたたかいピザを分け合って食べ、しばらくたった時だった。

「えっ・・」

「先日授業に来た時は話すのはもう少ししてからと思ったけど、ミナさんからいろいろ聞いたこともあり、沢さん、まだ動揺が治まっていないと思うけど、話しておいた方が良いと思って」

「見るようになったって?」

「沢さんが居なくなってから3か月ほどして、ミナさんに連絡して、沢さんのことを聞いた直後かな、夜中に目覚めてカーテンの向こうの空にとても大きなオレンジ色のものを見たんです。それが初めての経験だったわ。それから・・」

To Be Continued

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2018/09/09

宇宙政府

・・・
地球はまわる 君をかくして
輝く瞳 きらめく灯
地球はまわる 君をのせて
いつかきっと出会う ぼくらをのせて

父さんが残した 熱い想い
母さんがくれた あのまなざし
地球はまわる 君をかくして
輝く瞳 きらめく灯
地球はまわる 君をのせて
いつかきっと出会う ぼくらをのせて

サイカとシノが帰った後、
春利は思わず口ずさんでいた。

2人は土曜日に算数の特別授業を希望してきた。
中学受験の模擬テストだけは別の大手の塾へ受けにいくが、
ガリガリの受験勉強はしたくないと言い、
春利が勧めた受験塾へは入らなかった。
親も子供の意思を尊重し、それで良いといった。

「中途半端だと合格できない」と春利は言ったが、
「一応受験して受かればだけど、ダメだったら公立で良いというから」

2人の両親ともそんな様子で、ちょっとだけ応用の問題をやリたいと、
サイカとシノは言ってきたのだ。

模擬試験の結果をみても、それにしては2人とも悪くはない。
もったいないというか、2人の親子共々、ある意味変わっているとも春利は思う。

そんな2人の女の子が好きだといって口ずさんでいるのが、
天空の城ラピュタの主題歌「君をのせて」だった。

このところ、知的生命体の彼らは何も言ってこない。
その方が良いが、それとは別の意図が彼らにはあるらしい。

現実は歌のようにロマンだったりファンタジーはないと春利は実感している。

自炊しようか外に出ようか迷っていた時、スマホの着信音が鳴った。

To Be Continued

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2018/08/30

宇宙政府

半年以上授業を休んでいた春利が教室の生徒の前に立ったのは、
10月の終わりに近かった。

その日、春利と石橋梨花が8名の小学5年生の前に立ち、
今回の事情を話し、
石橋梨花も算数を中心に授業を担当することになったことを紹介した。

「少しやせたんじゃない。わたし、沢先生が宇宙人にさらわれたのかと思った」
説明が終わり、少し間が出来た時だった。サイカがそう言って友達のシノの方を見た。
シノもうなずき神妙に笑っている。

「なるほどね。私は、以前働いていた会社のシャンハイ支店でのことがあってね。
いずれにせよ、長い間、大変迷惑をかけてごめんね。そんなこともあって、
石橋先生にも手伝ってもらうことになりました」

「沢先生、ぼくも宇宙人に興味があるから、何かあったらおしえてね」

「おお、コウキくん、キミは何か体験してるの?」

「うん、僕もあの公園で夕方暗い時間にブーメラン型のやつ、見たことあるよ」

「あそう。じゃあ、授業が終わってから詳しいことおしえてよ。
今日の算数は、石橋先生がメインで、私はサポートで回るから、
分からないとこがあったら質問して」

1時間の休憩後、中学生の授業が始まり、
春利は石橋梨花と並んで立ち、同様の説明をして頭を下げた。

「先生、おれら、ほんとうのこと聞いたって受け入れるよ」

一人の生徒の発言に、春利は冷や汗をかきながら頷いた。

「沢さん、なんか、生徒の方が分かっているような感じね」

「そうだね。ここに来ている生徒たち、いろんな情報をネットで見聞きしているんだろうか」

「父兄の方も、さまざまな情報を交換しているのかもしれないわね」

「なんか・・」

To Be Continued

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2018/08/12

近未来

「どれくらい先かは分からないけど、5年も10年も先のことだとは思えないわ」

「それは、今回のような・・」荘太がミナの顔をうかがいながら言った。

「断言は出来ないけれど、そのときは一人ではないと思うわ」

「ということは、僕のほかにも」

「ええ。私やお父さまや・・」

「えっ、わたしも・・」

「ミナさんや父さんも。そのほかにも?」

「はい。私に見えているのは・・。でも、外れたり途中で見えなくなることもあるから」

「じゃあ、僕の塾の方は?」

「それで、そのときのために、春利さん、塾をつづけるためには、準備をしておいた方が」

「ミナさんに良い案があれば教えてもらいたい。先を見越して」

「ええ。実は、来未さんのお姉さんが、数学教師の資格を取ったんです」

「えっ? 梨花さんが」

「はい。実はその後連絡取りあっていて、梨花さん、通信で以前からやっていたらしいんです」

「そうだったのか。まったく言わなかったけど」

「ええ。それで、そうなった場合、梨花さんにお願いしたらどうかと」

「それじゃあ、梨花さんは、そうなったときのメンバーには含まれない、ということ?」

「ええ。梨花さんは見えていないわ。それで、春利さんの後輩や都合つきそうな人に声をかけておいたらどうかと」

「そういうことだったのか。じゃあ、春利、そうならなければ問題ないが、なったときのために」

「分かった。生徒たちには本当のことは言えないからどうしよう。二度目だし」

「ミナさん、それって、春利は塾の仕事があると言って断るってことは出来ない?」

「彼らは、この先、人間が生き延びるために必要なことであれば、それを決行すると思うわ」

「それが、なぜ我々なんだろうか?」荘太がそう言ってミナの目を見た。

「彼らにはそれなりの理由があると思うわ、言わないけど。それに、世界中で行われているから」

「僕らだけではなく、世界中で」

「ええ。国内でも。公表されることはないけれど」

To Be Continued

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2018/08/06

近未来

授業が終わった帰りだと、早乙女ミナから荘太の家に電話が入ったのは10月の最初の土曜だった。

「春利、早乙女さんから電話で、明日の日曜にちょっと立ち寄っても良いかと言っているが?」

荘太に半ば付き添われ、春利が電話機のところへ行った。

「お久しぶり。塾の方もずいぶんお世話になっています。僕も話したいことがいっぱいあるから・・」

「父さん、ミナさん、明日の午後2時頃ここへ来たいと言っているけど」

「春利の体調に問題なければ私はOKだよ・・」

翌日、荘太の住む集合住宅のブザーが鳴ったのは、ちょうど午後2時だった。

「駅から道はすぐ分かりましたか?」

「ええ」
ドアに手をやり招き入れた荘太に、ミナはスマホをかざして見せた。

「スマホのアプリを使わなくてもミナさんなら」
ミナは満面の笑顔を荘太に向けた。

「春利さん、気分はどう?」

「ええ、急に立ったりするとちょっとめまいがするみたいで、足元がふらつくけど、ゆっくりなら大丈夫」
荘太に案内されてきたミナにソファに座った状態で春利が応えた。

「今、寝泊まりはどちらで?」

「武蔵野の生家からです」

「塾の方では、ほんとうに、お世話になっています」

「いえ、この時代、予期しないことが起こるものだから・・」

「僕も、そろそろ塾の生徒や先生たちにあいさつに行かなくては」

「そのことなんだけど、この先起こることを想定して対処した方が良いと思い、そのことを話しておこうと」

「えっ、この先、また何かが起こるということですか?」

To Be Continued

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