2018/05/06

父子の絆

「塾長、まだだよね?」

夏期講習が終わる日、帰り際小6男子が桑田荘太に訊いた。

「ごめん。もうちょっと待ってね」荘太は心臓の辺りに痛みが走るのを感じた。

小学校低学年の女の子は、沢先生のおとうさんと言い、家庭での出来事を話してくれる生徒もいた。

このまま春利が帰らなかったら、とその都度荘太の胸が痛んだ。

その日、午後部の中学生の授業が終わって間もなく、固定電話のコール音が室内に響いた。

「ああ、お父さま。早乙女ミナです。今、大丈夫ですか?」

「あっ、はい。さきほど、中学生の授業が終わり、講師の先生も帰ったところです」

「たぶん、お父さまにとって良い知らせになるのではと」

「は、春利のことですか?」

「ええ。春利さん、元気とは言えないまでも、しっかりと生存してらっしゃいますから」

「早乙女さんの特殊能力で春利の何かが・・」

「はい。あの異星人と会話しているところが見えたんです」

「あの、連れて行かれた星で、ですか?」

「ええ。星の名前も分からないんですけど、室内のようなところで、春利さん特殊な宇宙服に包まれて」

「それじゃあ、あれから半年になるけど無事で・・」

「はい。それで、話している内容が地球へ帰ることです」

「春利が地球へ帰ってくる」

「はい。人間のロケットと違い、彼らの乗り物だったら、数日で地球に着くでしょうから」

受話器を握る荘太の頬に一筋の涙がこぼれ落ちていた。

To Be Continued

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2018/04/14

父子の絆

桑田荘太は小田急電車のつり革につかまっていた。

春利が居なくなってから、荘太は春利の家に泊まる日が多くなった。
頭の中はいつも春利のことが気がかりだったが、週に一度は自宅に戻り、
問題はないか確認した。
新聞の契約は解除したが、電気・ガス・水道はそのままだった。

あと10日もすれば、7月に入る。夏期講習の準備もしなければならなかった。
塾の方はなんとかなっても、春利がいつ戻るか、
ほんとうに帰ってくるかが気になり、眠れない日も多かった。

町田駅を告げる車内アナウンスが流れた。
小田急からJRに乗り換え、次は新横浜で市営地下鉄に乗り換える。
昼食は塾の近くで食べようと思う。

それにしても、春利が居なくなってから3カ月になる。
市営地下鉄の席に座り、向かいの席に座っている背広姿の男性を見た。
スマホで何かをチェックしている様子だ。
年齢は春利と同じくらいだろうか?

離婚してから、長いこと会っていなかったが、春利は私を探してくれていた。
5歳だった春利が、りっぱに成長し、私の前に現れた。
妻のさなえは病死したが、春利は私をたずねて・・。

しかし、上海から戻った春利は、会社を辞め学習塾を始めた。
3年間無事にやってこられたのに、とつぜん行方不明になってしまった。・・

車内放送が遠くの方で聞こえた。
「あっ!」
意識が戻った時、荘太は下車駅を過ぎてしまったことに気付いた。

To Be Continued

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2018/04/03

希望

「早乙女さんもミッション系の大学で教えていたようだけど、
私やサト子さんもキリスト教の方だけど、神社もお寺も教会も、
元は一つではないかと、早乙女さんも思っているのかもしれない」

「わたしは良くわからないけど、その早乙女さんは、神社で何かを追及している?」

「そうだと思う。神とETの関係というか・・」

「桑田さんはどう思っているの?」

「電話では長くなってしまうから」

「神さまって、ETなの?」

「聖書には、神の形に似せて人をつくった、とあるよね。
つまり、キリスト教の神は、人を見れば神の姿が想像できる。能力は天と地の差があっても」

「私はまだ会ったことがないから、分からないけど。
ロバートは、ETにもいろいろな種類があるって言ってるわ」

「そうだろうね。アメリカの外科医出身で、ディスクロージャー・プロジェクトを始めた人が、
50%以上が人間に似ているって言ってるね」

「でも、突然目の前にあらわれたら、どうしよう?」

「小柄で眼の大きなグレイタイプであっても、現れたら、やはり怖いし、おびえると思うね」

「そうね。言葉が出ないと思うわ。でも、そのETと神さまとはどう違うの?」

「人が信仰している神さまにもいろいろあるよね。思うに、
天孫降臨を直接目撃した人や現れたある存在が病気を治してくれたり、
夢に現れて何かを告げた存在、というように、一番最初の体験者がいて、
結果としてそこから信仰の対象となる神のようなものが生まれたのではないかと」

「・・・」

「だから、人が出会ったETにより、信仰の対象が違った姿で描かれる、というか」

「狐の神さまとか・・」

「そう。さまざまだよね」

To Be Continued

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2018/03/28

希望

「じゃあ、捜索願とかもしないで・・」

「そう。先ほど言ったリモートビューイングが出来る早乙女さんのいうことを信じて」

「でも、その塾の方は? 通っている生徒がいるでしょう」

「それで困ったんだけど、春利からも
『僕が突然いなくなったときはあれが関係していると思って』と言われていたことを思い出して」

「でも、塾の生徒や父兄の方たちは、なぜ何も言わないで急に塾長がいなくなったか・・」

「『後輩にも頼んであるけど、そのときは、父さんにも助けてもらいたい』
って息子から言われたことを思い出し、急に以前勤めていた会社の上海支店で、
頼まれたことがあってしばらく留守にするけど、
授業の方は、後輩の代りの先生たちがやってくれるので、戻るまで待ってほしいと・・」

「前置きもなく、突然いなくなって、そんなんで、みな納得してくれたの?」

「分からないけど、こちらとしては、それ以上のことは言えないから」

「そうね。じゃあ、桑田さんも・・」

「月謝の管理とか、先生のアルバイト料の計算とか」

「そうなんだ。わたしは、分からないけど、その早乙女さんには見えているのね」

「だと思う。彼女も大学で数年前まで英語を教えていた人だから、
人がいないんだったら教えてもいいと言ってくれて」

「それは頼りになるわね。じゃあ、今は・・」

「別名で、小説を書き始めたと。東京に生家があるけど、京都に自分の住まいがあるようだけど」

「その方は、特別な能力があるみたいね」

「最近は神社めぐりをしていると言ってたけど」

「神社めぐり・・」

To Be Continued

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2018/03/17

希望

「ハロー。桑田さん。SATOKOです。わたし、家越したのよ」
電話が鳴ったのは、夜の9時過ぎだった。

春利が居なくなって心配で仕方なかった荘太は、つづけて3度、砂田サト子にメールした。
スカイプの方はいつもオフになっていたから、以前のメールが使われているか不明だったが、
とにかくメールしないではいられなかった。

「転居したって、前の一戸建てから近いところ?」

「そう。タウンハウスに移ったの。わたし、病院の勤務、週4回にしてもらったから」
4月だからフロリダはサマータイムに入っているのだろう、と春利は思い出す。

「以前のメールが使われていて良かった。スカイプの方が電話代がかからなくていいのに」

「わたし、スカイプは今はやっていないわ。安くかけられる電話に申込んだから。
それで、桑田さんその後元気だった?」

「それがね。息子のことで心配なことが・・」

「上海に行ってた・・」

「あれから帰国して、会社辞め、学習塾をやってたんだけど。それが、行方不明になって」

「えっ、いつから?」

「もう、1ヶ月近くになる」

「どういうこと?」

「それが、アメリカでよく動画がアップされている・・サト子さんのいるフロリダでも」

「アブダクション!」

「春利の友達に、リモートビューイングが出来る女性がいて、その人がやって来て、
春利が、何か、マシンの中に地球人ではない存在といるところが見えたといって知らせに来てくれて」

「ロバートもそうしたことに興味があって良く観ているわ」

To Be Continued

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