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2018/08/12

近未来

「どれくらい先かは分からないけど、5年も10年も先のことだとは思えないわ」

「それは、今回のような・・」荘太がミナの顔をうかがいながら言った。

「断言は出来ないけれど、そのときは一人ではないと思うわ」

「ということは、僕のほかにも」

「ええ。私やお父さまや・・」

「えっ、わたしも・・」

「ミナさんや父さんも。そのほかにも?」

「はい。私に見えているのは・・。でも、外れたり途中で見えなくなることもあるから」

「じゃあ、僕の塾の方は?」

「それで、そのときのために、春利さん、塾をつづけるためには、準備をしておいた方が」

「ミナさんに良い案があれば教えてもらいたい。先を見越して」

「ええ。実は、来未さんのお姉さんが、数学教師の資格を取ったんです」

「えっ? 梨花さんが」

「はい。実はその後連絡取りあっていて、梨花さん、通信で以前からやっていたらしいんです」

「そうだったのか。まったく言わなかったけど」

「ええ。それで、そうなった場合、梨花さんにお願いしたらどうかと」

「それじゃあ、梨花さんは、そうなったときのメンバーには含まれない、ということ?」

「ええ。梨花さんは見えていないわ。それで、春利さんの後輩や都合つきそうな人に声をかけておいたらどうかと」

「そういうことだったのか。じゃあ、春利、そうならなければ問題ないが、なったときのために」

「分かった。生徒たちには本当のことは言えないからどうしよう。二度目だし」

「ミナさん、それって、春利は塾の仕事があると言って断るってことは出来ない?」

「彼らは、この先、人間が生き延びるために必要なことであれば、それを決行すると思うわ」

「それが、なぜ我々なんだろうか?」荘太がそう言ってミナの目を見た。

「彼らにはそれなりの理由があると思うわ、言わないけど。それに、世界中で行われているから」

「僕らだけではなく、世界中で」

「ええ。国内でも。公表されることはないけれど」

To Be Continued

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2018/08/06

近未来

授業が終わった帰りだと、早乙女ミナから荘太の家に電話が入ったのは10月の最初の土曜だった。

「春利、早乙女さんから電話で、明日の日曜にちょっと立ち寄っても良いかと言っているが?」

荘太に半ば付き添われ、春利が電話機のところへ行った。

「お久しぶり。塾の方もずいぶんお世話になっています。僕も話したいことがいっぱいあるから・・」

「父さん、ミナさん、明日の午後2時頃ここへ来たいと言っているけど」

「春利の体調に問題なければ私はOKだよ・・」

翌日、荘太の住む集合住宅のブザーが鳴ったのは、ちょうど午後2時だった。

「駅から道はすぐ分かりましたか?」

「ええ」
ドアに手をやり招き入れた荘太に、ミナはスマホをかざして見せた。

「スマホのアプリを使わなくてもミナさんなら」
ミナは満面の笑顔を荘太に向けた。

「春利さん、気分はどう?」

「ええ、急に立ったりするとちょっとめまいがするみたいで、足元がふらつくけど、ゆっくりなら大丈夫」
荘太に案内されてきたミナにソファに座った状態で春利が応えた。

「今、寝泊まりはどちらで?」

「武蔵野の生家からです」

「塾の方では、ほんとうに、お世話になっています」

「いえ、この時代、予期しないことが起こるものだから・・」

「僕も、そろそろ塾の生徒や先生たちにあいさつに行かなくては」

「そのことなんだけど、この先起こることを想定して対処した方が良いと思い、そのことを話しておこうと」

「えっ、この先、また何かが起こるということですか?」

To Be Continued

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2018/07/27

近未来

「春利、半年もの間、よく無事でいて帰って来られたな」

「地球へ戻って来て、あの異星人にも乗り物の中で地球時間で6カ月と告げられたけど、とてもそんなに長くいたという感じがしないんだ」

「それって、相対性理論?」

「分からない。彼らの乗り物の中での事もそうだけど、あの星で過ごした時間も」

「春利、無理して考えることはしない方が良い」

「うん。光速に近い速さ以上だと時間が遅れる。それに、あの星での体験も時間の概念が・・」

「難しいな。そもそも、どのような方法で宇宙間を移動したのか、
その星では時間の概念がどうなのかな?」

「うん。僕にも分からないことだらけ。ただ、あの星でも、地上と地下があったのだと思う。
到着した所が地上なのか地下なのかも曖昧だったけど」

「別の空間?」

「それも分からない。地球上のような建造物は見当たらなかった。彼らの日常生活も分からない。
ただ、僕には地球上にいるような部屋があてがわれたよ。そこには地球上にあるような花があって、
羊に似たような動物がいて、不思議と気持ちが通じた」

「それはまた不思議だね。それで、その星には酸素は?」

「少しだけあると言っていた。ただ、あてがわれた部屋の中では、地球にいる時と同じように、
宇宙服を着なくても過ごすことが出来た。きっと、彼らの呼吸法も人とは違うし、内臓も違うんではないかな?」

「食べ物は?」

「それが、あの星にいる間中、メインの流動食、それにジュースのようなものを与えられたけど、
食べたのは僕だけで、それに、あの星の知的生命体は、僕があてがわれた宇宙服とは全然違う、
見たこともないスーツのようなものでおおわれていて」

「二足歩行ではない?」

「足は2本あるけど、空中浮遊状態でスーッと移動してゆくんだ。それに、とつぜん消えたり現れたり」

「じゃあ、春利だけが二足歩行?」

「僕にも、浮かんだ状態で移動できる腰につける装置を貸してくれたけど、彼らはそんなのつけていなかった」

「別のテクノロジーを持っているのかもしれないね」

「うん。訊いても、教えてくれなかった。教えてもらっても分からなかったと思うけど」

To Be Continued

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2018/07/03

帰還

「父さん、電気カミソリとか歯磨きある?」

「あるよ。トイレにも這っていってるけど、ここへ持ってこようか?」

「立つとまだ目が回る感じがするけど、ちょっと肩をかしてもらえば。
だいぶ治まって来たから」

「そうか。無理しなくていいんだよ」

「うん。でも、少しずつ慣らしていかなくては」

春利は荘太に付き添われて洗面所へ行った。

荘太はすぐにダイニングの椅子をもっていった。

椅子に腰かけた春利は先に歯磨きを始めた。

「父さん、塾の生徒たちにはまだ言ってないよね」

「言ってないよ。以前勤めていた上海で、どうしてもやらなければならないことがあって、
と言ってある。だから、めまいも止まり、授業が出来るようになるまでは、
後輩の先生たちにも言わないでほしいとお願いしてあるから」

「安心した。父さん、これこそカルチャアショックだよ」

「そうだろうな。俺だったらショック死していたかも・・」
髭剃りの音が響く。

「父さん、あの星は、人間が住み続けるには大変だと思う」
顔を拭きながら春利。

「・・・」

「地上では紫外線が強くて、宇宙服を脱げないし。以前連れて行かれた人は、
それで亡くなったらしい」

「以前連れて行かれた人がいた・・」

「そう。地球で言う太陽が二つあるから」

To Be Continued

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2018/06/17

帰還

「父さん、塾の方は・・」
寝た状態でその朝目を開けた春利が荘太に訊いた。

「大丈夫だよ、春利の後輩や早乙女さんのおかげで無事にまわっているよ」

「良かった。もう無事に戻れないかと思っていた」

「どうだい。気分の方は?」

「うん。今日は、目が回る感じがだいぶ治まり、吐き気も止まった」

「そうか。だめだったら、病院へ行くしかないと思っていたが」

「この分だと何とか。僕は、どれくらい寝ていた?」

「戻ってから3日目だよ」

「何か、お粥とか食べられそうかい?」

「うん、少しだけ食べてみようかな」

「そう思って用意してあるよ」
荘太は春利に消毒用のおしぼりを2つ渡し、台所へ行った。

春利は布団の上で上体を起こし、水でいくどもうがいし、
自らスプーンで粥をゆっくりと口に運んだ。

「良かった。半年ぶりだね。応えたくなかったら無理することはないけど、
あの夜、戻った時のこと、憶えているかい?」

「憶えている」

「無理に記憶を手繰り寄せなくていいよ。食べる方も少しずつにして」

「向こうにいるときも乗り物の中でも、人間用の宇宙食みたいなのをもらっていたから・・。
あのとき、バルコニーに降ろされ、窓が閉まっていて入れないかと思ったよ。
目が回り立っているのがやっとだった」

「大変な経験をしたね。無理して一度に話さなくても良いよ」

「うん。父さん、緑茶もらえるかな?」

「OK」

To Be Continued

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