2017/06/20

奇妙な会話音

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「父さん、僕は早乙女さんが神社巡りをしているというのを聞いて、自分も勝手に神社へ行ったと思っていたけど」

「そうではないと思うのかい?」

「よく分からないけど、なぜ、あの日にあらたなETに出遭ったのかな。何か働きかけがあって、出かけて行く気になったのかな・・」

「うーん。何か夢をみたとか声が聞こえたとかではないんだね」

「それはなかったと思うけど、意識がそちらへ向く、というのは、自分の思いだけではないような気もするんだ」

「うん。私もそういうことを思う時があるね。彼らの働きかけというか」

「父さんもそういうことを考えることがあるんだ」

「あるね」

「それって、直接人間の脳に働きかけて彼らの意思を伝える。そうした場合、自分の願望から行動したようで、実は・・」

「そうだね。丸ごと動かされると、区別がつかないよね」

「そこまで行くと、分からなくなってくるなあ。悪く考えると、なるようにしかならない。なんか捨て鉢にもなりかねない」

「しかし、人としては、やはり良心というか、人が平和に暮らせるよう願うしかないと思う。人間にはそれ以上のことは出来ないから」

「そうか。良心に従って進めば良いということだね。でも、自分が良いと思って突き進んでいても、ほかの人にとってはそうではないということもあるよね」

「そうだね。それが大きな組織になると戦争に発展する。今の世界を見ても・・」

「戦争はなくならない。神と呼ばれるETは、人間がすることを黙ってみているのか、それともコントロールしているのか」

「そうだね。異なるET同士の戦争もあったと思うから、深く考えると分からなくなるね」

「でも、人間は彼らにはとても太刀打ちできないから」

「そうだね。人間は神をコントロールすることはできない」

「しかし僕は、来未が震災で亡くなるまでは、ETの存在は信じていなかったから」

「うん。我われ人間は、特殊な人を除いては異次元を行き来できないからね。ふだんは、目に見える物だけを頼りに生きているから」

To Be Continued

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2017/06/10

奇妙な会話音

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春利が父の家に行ったのは、年明け2日の昼だった。

「春利も2月で33か」

「父さんは?」

「今月10日で68になる」

「ところで父さん、去年の12月初めに横須賀の諏訪大神社という所へいったんだけど、そのそばの公園で初体験したことがあった」

「ヨコスカのスワオオカミシャへ。そこで今まで見たこともないことに出くわしたの?」

「そうなんだ。どんなことだと思う?」

「春利が初体験と言えば、これまで出あったこともない生き物とか?」

「父さん、よく分かったね。どんな生き物だったと思う?」

「うーん。会ったこともないETとか・・」

「父さん、図星。樹木の間で、緑も多かったから良くは見えなかったけど」

「大きかったの?」

「1メートルくらいかな。とにかく一般の人間の大人より小さかったことは確かだよ。宇宙服かもしれないけど、体は緑色みたいで、目が大きく斜め上につりあがった感じ」

「春利は側まで行ったの?」

「それが、唸るような声というか、狸とか狐とかのものとも違うし、確かめようと、恐るおそるそちらへ近づいて、それでも、10メートルは離れていたと思うけど、2本足で立って向き合って何かを話しているようだった」

「春利の知らない宇宙語で話していた」

「そう。母音を伸ばすような。風にのって来たからそう聞こえたのかもしれないけど、とにかく意味不明だった」

「うーん。ネットでさまざまなエイリアンの姿みたいなのを見たことがあるけど、それぞれの種が、どんな会話というか意思疎通をしているのかは分からないね。やはり、宇宙語としか」

「それが、僕のことに気づいたからか、次の瞬間には2人の姿は消え、樹木の上の空に漆黒のスペースクラフト浮かんでいた」

「やっぱり、人間技ではないね」

「ひし形のクラフトの周りには、コバルトブルーの縁取りが光っていた」

To Be Continued

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2017/05/30

奇妙な会話音

春利は足を止め、耳を澄ました。機械の唸り音とも生き物の声とも分からない音はいったん止んだが再び聞こえた。

わずかな風がこちらに向かって吹いているのだろうか。

それにしても人の姿がない。春利はそのまま帰ろうかとも思ったが、背中のおにぎりをどこかで食べてからにしようと思い直した。

と、音のして来る方の茂みが動くのを感じた。狸とか猫とかかもしれない。確かめてみようと思い、そちらへ向かって歩き出した。

「ワーイーウー・・ワーイーウーエー・・」何か母音だけが尾を引いているようにも聞こえる。

10メートルほど歩いた時、春利は思わず息をのんだ。濃い緑の茂みの中で、緑色の何かが動いていた。ゆっくりと近づいて目を凝らした。

大人ではない。・・緑色の服を着た子供かもしれない・・。2人いるように見える。

さらに近づくと、2人の側に黒い何かの固まりのようなものがあった。

と、突然濃い緑の茂みが大きく揺れ、奇妙な生き物が二つ並んで現れた。

次の瞬間、春利は上空を見上げている自分に気づいた。

上空には、漆黒の物体があった。灰色の雲の下で、コバルトブルーの縁取りが光っていた。

それはひし形をしていた。

春利はおにぎりを食べることを忘れて神社の石段を下りていた。

初めて見た不思議な生き物。緑色の顔につりあがった大きな眼。背丈は1メートル位だったろうか。

あれは、彼らのことば・・・。宇宙服を着ていたのだろうか。

漆黒のスペースクラフト。

「ワーイーウー・・ワーイーウーエー・・」春利にはそんな風に聞こえたが、ほんとうのところは分からない。

何をしにあそこへきたのだろうか?

To Be Continued

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2017/05/29

奇妙な会話音

春利がミナとラインで話してから、行ってみようと思い立ったのは12月に入ってからだった。

シャンハイから帰国して会社を辞め、学習塾を始めたばかりと違い、教材の使い方や小中学生の父兄との接し方も勝手が分かった。入塾時に一番問題を生じそうな難関中学受験を希望する生徒の父兄が問合せて来た時は、受験専門の塾に行くようにすすめた。高校受験であっても、対応しきれない高校を目指している場合は、他の専門塾に行くよう勧めたことが正解だった。

春利一人で対応できる範囲だったから生徒数も限定されたが、生活して行くのには困らなかった。シャンハイから戻った頃は、ネットビジネスや中国語の仕事も考えたが、思うに、来未が震災で亡くなったことをきっかけに、春利はまったく想定外の世界に踏み込んでいた。

中3補講を土曜にすませた春利は、その日の朝おにぎりを作り横浜から京急で汐入まで行った。ミナが神社巡りをしていると聞き、春利も行かれる範囲の神社へ行って見ようと思うようになった。諏訪大神社にしたのは、父の郷里の諏訪大社の分霊(勧請)で建てたということからだった。

駅を出て6分ほどで急な石段が見えてきた。息を切らせて二つの狛犬を目にした時、日本のリサーチャーが、あれは門番の狛犬等ではなくバビロニアのエンキとエンリルだと言っていたのを思い出した。

再度石段を上がり、諏訪大社を思い出しながら参拝して、樹木の多い境内をゆっくりと見て回った。1380年三浦貞宗が横須賀の鎮守として信州諏訪の上下諏訪明神を勧請した。・・

ふと気づくと、目の前に狐とガマガエルのような顔の石像が春利の方を見ている。御祭神は健御名方命( たけみなかたのみこと )・事代主命 ( ことしろぬしのみこと )他と書かれていたが、眼前のこれもほんとうは神様なんだろうと手を合わせた。

そうしていると、春利はそこが広い公園に通じていることを知り、樹木がいっぱいのそちらへといつの間にか足が向かっていた。

諏訪公園にはあちこちに石碑があった。砲弾で撃ち抜かれたようなゆがんだ銅版がたっている所を横目で追いながら一休みしようかとベンチを探した。それにしても、昼前とは言え、日曜なのに人がいないのが意外だった。歩き回っているせいか、12月なのに少しも寒くなかった。

が、次の瞬間、春利は寒いものが背筋を走った。数十メートル先の樹木の方から奇妙な音が聞こえてきたからだった。人の話し声とは違っていた。立ち止って耳を澄ますと、何かの信号のようでいて、ある種の会話のようでもあった。

To Be Continued

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